十一年前の母屋改修について、今さらながらの思い出話を少し。
もともと台所は土間だったが、長年の使用で土が削れたり凹んでいたりして全体的に痛んでいた。そこで、コンクリートを使った新しい土間に作り替えようということになった。しかし、そんな大掛かりな作業は僕にとって初めてで、どこから手をつければいいのかさっぱりわからなかった。
幸い、別の改修作業を頼んでいた友人の陣さんが力を貸してくれた。彼は香川県で廃材を使って家を建ててしまったツワモノで、「廃材建築」の達人だ。彼の指示とアイデアのおかげで、作業はぐいぐいと進んだ。
まず土の上に砕石を敷き、水平を出す。地域の石屋さんからもらった石や墓石の切れ端を嵩ましとして使い、さらにコンクリートを流し込む。レベラーで水平をチェックしながら、左官鏝(さかんごて)で床面を整える。このようにして、新しい土間が完成した。
台所の床を土間にしたいと希望したのは奥さんだった。その最大の利点は「床が汚れても気にならない」こと。食べ物を床にまけようが、田畑から戻ってきた僕が泥だらけの長靴で歩こうが、土間ならそんなに気にならない(気にならないぶん、掃除の回数が減ってゴミは溜まっていくのだが)。
掃除も外箒でさっと履き出せるし、水で汚れを一気に洗い流すこともできる。ただし、表面が磨かれた墓石は濡れると滑りやすいので、雨の日などには注意が必要だ、ということがのちに判明する。
いろいろと改善点はあるものの、いまでは土間無しの生活は考えられない。靴を脱がずに食事が取れたり、ストーブで暖が取れるこの場所は、毎日のように野良作業や外での仕事がある僕らの暮らしにぴったりだ。ただ、土間に慣れていないゲストが靴下や素足で歩いて足の裏が真っ黒になるので、その度に説明が必要だけど。
日本家屋の素晴らしさにはいつも感心する。日本の気候や地域の環境にぴったりと合った造りは、住めば住むほどその利点がわかってくる。
改修から十一年、あの日土間を作ってよかったなあと、今でもしみじみ感じている。
写真に写っているのは、陣さん。
僕が彼と知り合って以来、いつも影響を受けている。超かっこいい生き方。
YouTubeもやってるので、気になった方は「廃材天国」で検索してみて。