帰宅して、うわっとのけぞった。玄関先に置かれていた何本ものハチクたち。こんなにたくさん、誰が置いてくれたのか。すぐにその人の顔が頭に浮んだ。
後でお礼の電話しようと思いつつ、このままでは食べられないハチクたちを、これからどう下処理するか?そのことに心を持っていかれる。ハチク宅急便が届くということは、これからやるべきことが新たに一つ加わったということである。
ハチクを茹でる
ハチクは、初春の孟宗竹や真竹に続き、今の季節に出てくる竹の一種。竹藪などに、まるでアスパラのようにニョキッと真っ直ぐ生えている。孟宗竹などと比べて苦味やアクが少なく、米ぬかを入れずに水だけで茹でることができる。
なんと言っても鮮度が命。放置しておくと周りに小さな虫がぶんぶん飛び始める。急がなくては!
(と言いながら…、この日は私のエネルギー切れ、茹でることができたのは次の日だった)
ハチクの先端のうねりは、美しさとちょっとした不気味さも感じ、いつもまじまじと見てしまう。ゴッホの晩年の作品「星月夜」に描かれている糸杉に似ている、と思うのですがどうでしょう?
包丁で真っ二つに割って、皮を剥ぐ。「丸ごと皮を剥ぐよりも、半分に割って剥いた方が簡単だよ」と近所のおばあちゃんに教えてもらってから、毎年こうしている。
皮と身の間に指を入れて、メリメリと剥ぐ。幾重にも重なる皮の内側の先端は柔らかく、下の方へいくにつれて固い。
ハチクの根元は、透き通るような若竹色。皮を剥いだハチクは大体大鍋ひとつ分で、ハチクの皮の量はその5倍ほどもあった。皮は裏の畑の隅へ運んだ。いつか土に還るだろう。
長いものは鍋に入る大きさに切り、水をたっぷり入れる。中火でコトコト一時間ほど茹でる。私はこの香りがたまらなく好きだ。5月、山のシイが一斉に花をつけた時に吹く、むんとした風の香りに似ていると思う。
一時間ほど茹でると根元の若竹色が消え、たまご色に。このまま冷めるまで置き、冷めたら水をかえて一晩水につけておく。
一晩水に浸けたハチクはこちら。たまらず一つ、かじってみると苦味もえぐみも全くない。あまりに美味しくてもう一つ食べた。
これで、ハチクのメンマや、ひき肉とハチクを甘辛く炒めたおかずを作りたい。数日、ハチク料理が続きそうだ。
山の恵みをわざわざ持ってきてくれる人がいることに、心から感謝。ありがとうございます!