ある日集落で、防災についての話し合いがあった。
今ある施設をどう有効活用していくか、日頃の見守りはうまくいってるか、必要な備品は揃っているかなど自然災害への対応を集まった人たちで検討した。
その中で「そろそろ非常食を更新せないかん」という話題になった。地域のコミュニティセンターとして活用している元小学校の倉庫には飲料水やインスタント食品が備蓄されている。その一部が賞味期限間近だと言う。最近の非常食は、水を入れるだけで食べられるご飯などがあり、乾パンくらいしか選択肢がなかった時代に比べると種類も豊富でより手軽になった。
「防災訓練で炊き出しをするから、味見してみよう」
「買い替えとなるとお金が掛かるねえ」
口々に話していると、ある方が、
「まあ家には米があるし、そっちの方が美味いけねえ」
何気ない一言だったが、僕にとっては目からウロコ的な事実だった。
米処でもある土佐町には、お米を作っている農家さんが多い。週末毎に田んぼの世話をしている会社員もいる。そして、収穫した米を自宅に保管している。畑には野菜があるし、季節によっては山菜や野草も採れるし、塩抜きや解凍すればいつでも食べられる食材が常備されている。お風呂用に薪を蓄えている家庭もあるから、簡易のかまどを作れば炊き出しができる。もし被災して、集落が孤立しても、物資が数日間来なくても、生き残れる環境がすでにある。お裾分けや見守りといった日頃の付き合いや昔からの習慣が減災や共助に繋がっていく。
災害には想定外がつきものだし、その時の状況に合った対処が求められる。家に米があるから非常食を備えなくとも良いとはならないが、バックアップが二重三重になっているのは、とても心強い。
写真:「名づけ」で紹介した月詠は、四月に一歳になった。ヨチヨチと歩き出し、一生懸命兄妹のあとをついて回ってる。父ちゃん母ちゃんが何度も貼り直した障子を気に入ってくれたようで、手や顔を出してはご機嫌の様子。当然、障子紙は破れ、穴が大きくなるのだけれど。