土佐町の地蔵寺川の南岸、宮古野から南泉方面を歩いてきました。
2月のフィールドはまだまだ枯草色で、花をつけているのはオオイヌノフグリとタネツケバナぐらいです。
草刈りの整然とされた田んぼの畔と法面は、淡い黄褐色とくすんだ緑色が混在しています。
緑はヒガンバナなど背の低い常緑多年草の葉っぱです。背の高い植物が刈り払われてから後、陽光を独り占めにして目立っています。
中でも一番多くありそうなのがキジカクシ科の多年草ジャノヒゲです。
地際から無数の葉が生えています。
葉は長さ15~20㎝、幅2~3㎜。線形で細長く、くねくねと曲がっています。
和名のジャノヒゲは、この細長い葉を「蛇の髭」に例えたものとされていますが、実際の蛇には髭がないので、想像上の「竜」の髭と仮定して別名リュウノヒゲとも呼ばれます。
また別に、ジャノヒゲの由来は「尉(じょう)の髭」からきていると云う説があります。「尉(じょう)」は老人を意味し、伝統芸能の能の「尉面(じょうめん)」の顎鬚(あごひげ)に葉の形を見立てたというものです。
緑色の葉をかき分けると宝石のように深い青い色をした実が出てきます。直径7~8㎜の球形です。驚くほどたくさん、あちらこちらにあります。
子どものころには誰もがこの実をジュウダマ(銃弾)と呼んでいました。竹で拵えた「突き鉄砲」の弾にして遊んだものです。
ジャノヒゲには果実と種子の関係についても驚かされることがあります。
めしべの子房が大きくなったものが果実、子房の中にある胚珠が熟したものが種子なのですが、種子を保護する役目のある果皮が早く落ちてしまい、ジャノヒゲの種子はむきだしになってそのまま成熟するそうです。
すなはち、青い実は果実ではなく種子なのです。
1株掘ってみました。
ジャノヒゲの不思議な姿がよく分かります。
根の一部がこぶ状に膨らんでいますが、この部分をとって日干しにしたものは滋養強壮、咳止め、去痰などに効く生薬になるとか…。