とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただいています。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。
鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載されます。
風が見える
10月、土佐町の山々の田は稲刈りの季節を迎える。お米を育てる人にとっては忙しく、1年間の苦労が収穫の喜びに変わる時だ。
土佐町は米どころ。町内には見事な棚田の風景を一望できる場所がある。
くねくねした細い道の周辺に点在する家々を見ながら、上へ、上へ。途中には、土佐あかうしを育てる家があったり、芽を出したばかりの大根や白菜の小さな苗が育つ畑がある。きれいに刈られた道端には白や桃色のコスモスが咲き、さらさらと稲穂が揺れる音がする。
その先にたどり着く、黄金色の大海原。大きい田、小さい田、さまざまな形の面が幾重もの金色の層をつくり、遠くには四国山脈が連なる。
この場所は、いつも気持ちの良い風が吹いている。稲穂を波立たせ、あちこちの田を揺らしながら通り抜けていく。風は見えるのだと初めて知った。
「この風が米をおいしくしてくれる」とお米を育てる人が教えてくれたことがある。棚田を前に、この地を耕してきた人たちの姿を思う。その人たちもきっと同じ風を見ていたに違いない。
天気に恵まれ、皆が無事に稲刈りを終えられますように。そしてゆたかな実りがありますように。
(風)
2023年10月13日、高知新聞に掲載された記事です。
土佐町は美味しいお米が育つ米どころ。そう言えるのも、朝晩の寒暖差ときれいな山水があり、お米を作る人たちがいるからです。
棚田の前に立つと、あちらへ、こちらへと、風が通り抜けていくのが見えます。稲穂が揺れているところが風の通り道。その風景を見るたび、近所のおじいちゃんが「この風が米を美味しくしてくれるんじゃ」と話してくれたことを思い出します。小さな悩みや迷いも吹っ飛んでいきます。
先日、今年の新米をいただきました。ツヤツヤ、ピカピカ、神々しいごはん。炊き上がった湯気もごちそう、一気に3杯はいけます。
美味しいお米を日々食べられることに感謝。ありがとうございます。