政府からの新型肺炎感染拡大防止対策の要請を受け、僕らの住む土佐町では三月四日から小中学校が休校となった。
四人兄弟のうち、小学生のふたりは突然はじまったお休みを喜んだ。保育園は通常通りに開いているが、「ねぇね(姉)とにぃに(兄)が家にいるから、オレ保育園行かない」と次男。果たして、早めの春休みがスタートすることになった。
最初の数日、子どもたちは家で楽しそうに遊んでいたが、そのうち飽きてしまう。出掛けようにも、地域の施設やイベントは閉まったり中止となり、行ける場所が限られている。奥さんも僕も基本的に家で仕事なり作業なりしているので、子どもの相手はできるが、その分自分のやらなければいけないことが後回しになる。これでは子どもも大人もストレスがじわじわと溜まっていく。
予定よりも遅れていく春先の作業に悶々としていた僕。膝の上で次女をあやしながら、心はここにあらず、どうやって計画通りに事を運ばぼうかと頭を捻っていた。ふと娘と目が合い、彼女が笑った。頭の中で忙しく考えていた意識が引き戻され、四月で二歳になる彼女の重さを肌で感じ、大きくなったなあと思う。そして、そうか、こんな時間はこれからもずっとあるわけではないのだ、という気持ちが湧いてくる。自分のことは、日にひとつかふたつできたら上等、できなくてもまあ明日考えよう。
農作業が間に合わなくても、作業が予定通りいかなくても、状況に応じて組み立て直せばいい。季節が巡ればまた種は蒔ける。でも今の彼らと付き合えるのは今しかない。現状に抵抗をせず、いまできることを楽しもう。笑おう。きっと免疫力も上がるだろう。
特別なことをするわけではない。一緒に畑の野菜を収穫して料理したり、近くの川や山で遊んだり。これまでもしてきたことだ。けど、どちらかと言うと、奥さんに任せていた「子どもとの時間」に僕も加わって、この事態を乗り越えてしまおう。
世界が一日も早く落ち着いて、安心して学校に通える日常が戻りますように。