いつもお世話になっている澤田清敏さんが「迎え火、見たことないんやったら見てみるかえ?」と声をかけてくれ、お盆の過ぎた8月のある日、わざわざもう一度「迎え火」を焚いてくれた。
もう日が暮れかけた頃にお家を訪ねると、家の入り口に運動会の玉入れのカゴのようなものが立っているのが見えた。
そばでよく見てみると、地面に立てられた竹の先にカゴがくくりつけられていて、その中には木切れがたくさん入っている。
まず、坂道を登った先にあるご先祖さまが眠るお墓へ向かった。自分の足音と草むらの中からの虫の声とが耳元で響く。
先に続く道を見通せる場所にお墓はあった。その両側には家の前にあったものよりふた回りほど小さなカゴが、やはり竹の先につけられていた。
橙色の火がパチパチと音を立てながら、辺りの黒々とした山々の輪郭を照らす。
ご先祖さまは、この火に迎えられて家に帰るのだ。
「昔はこの火を持ち帰って、飯ごうでごはんを炊いたものよ。」清敏さんは懐かしそうにそう教えてくれた。
「迎え火の話は、お母(沢田千恵野さん)に聞いたらえい」。
渡部仁海
迎え火の行事も土佐町は原点に近いものがありますね。
鳥山百合子
渡部さん、時代とともに迎え火の行事も変化していくのでしょうか。地域によって色々なやり方があるのでしょうね。
多分、同じ土佐町でもその家によってそれぞれの方法があるのだと思います。
お話を伺っている時、「きれいなね、きれいなね」と言いながら、火を見つめていた人たちの姿がすぐそばに見えるような気持ちがしました。