これはもう名付けた僕に責任があるのだけれど、「むかし暮らしの宿 笹のいえ」という屋号なので、「車もネットも電気すらない昔の暮らしをしてる家族」と思われちゃってることがある。実際は、車は二台あるし、Wifi飛んでるし、電力会社からの電気を使ってる。訪れた方から「意外と現代的なんですね」と残念そうに言われたこともあった。ごめんなさい。生き方に特別な思想があるとも思われがちだが、「こうなければいけない」と言うこともほとんどない。
こんな暮らしをしていると、有り難いことにメディアから取材を受けることがあって、「これから笹のいえをどうしたいですか?」とか「経済優先の現代社会に言いたいことはありますか?」と質問されたりする。未来や夢を語る、記事の締めとして大変重要な質問である。しかし、取材される方の思惑に添えず申し訳ないのだが、僕はいつも「うーん、特にありません」と答えてしまう。
「コンポストトイレは地球に優しいから皆さんもぜひ自作してください」とか「皆が薪と山水で暮らせば、世界が平和になりますよ」などと言うつもりはなくって、何を快適かと感じるか、生活環境やその他いろんな条件などは、人によって様々。それを「こうした方がいい」なんてとても言えない。僕らはもちろん今の暮らしが好きだけど、そのまま他の人に当てはまるわけではない。
それでも、ご縁があって、笹に来て、おしゃべりして、一緒にご飯を食べて、お風呂に入る。むかし暮らしが、これからの何かのきっかけになってくれたら、それだけで嬉しい。