「納涼祭の踊りの練習が来週からはじまるき!参加してみる?」と、きよみさんから二年前の七月、石原踊り子隊に誘われました。
週2回、大人も子供も旧小学校体育館で、地元のベテランさん達の後ろに付きながら見よう見まねで踊ります。
かなり年季が入っている鳴子を手に持ちながら、『よさこい音頭』や『土佐町音頭』を納涼祭実行委員がかける音楽に合わせ、輪になって何度も練習。
私にとって、鳴子を手にするのは初めて。
三本の小さな拍子木がついた羽子板状のものを両手に持ちながら、振付に合わせカチャカチャと音を鳴らせようとするのですが、なかなかきれいな音が出なく、そちらに集中すると脚の出し方が逆になったり四回繰り返しの振りが二回になったり…

週二回の練習風景
1時間余り、次々と新旧の楽曲を練習していきます。
練習の後は体育館のお掃除、そしてご褒美の冷たいアイスをみんなで食べます。
体育館の外に出ると、きれいな星々が山に囲まれた空に瞬き、外の手すりには渡部家の白い犬みるくちゃんが嬉しそうに尻尾を振って家族を待っています。
納涼祭実行委員会の方から、「土曜日は6時半に文化会館からバスで相川へ行きますので、よろしく!」と声がかかります。
そういえば私が子供の頃は三重の地元にもたくさんのお祭りがあり、母に浴衣を着せてもらって友達と一緒に盆踊りに参加した思い出があります。
いつの間にかそれらの祭りは無くなり、ちょっと寂しい夏の帰省になっています。
今も懐かしい里山の夏の風景が残っていることは、ここに移住して来て良かったと思うことの一つ。

石原踊り子応援隊〜地蔵寺納涼祭にて
土佐町には各地区で夏祭りがあり、皮切りは七月最終土曜日にある、赤い提灯が祭りの風情を讃える『中島観音樣 夏の大祭』。
そして8月に入ると『相川納涼祭』、『地蔵寺納涼祭』へと踊り子隊はバスで他地区へ遠征します。
相川納涼祭の日、文化会館から町の貸切バスで会場へ。
到着した旧相川小学校グラウンドには屋台が並び、テントやベンチと一緒にビールや清涼飲料が用意されています。石原踊り子隊は応援で来ているので、ゆっくりと祭りを楽しみながら、会場で知り合いに会うと話に花が咲いたりすることも。
今年は東京から友人が石原にある『木の家』に1ヶ月滞在して、土佐町の夏を楽しむためにやって来ました。
到着早速、石原の法被を借りて『相川納涼祭』に踊り子として参加します。

祭りのパレード出発!
幸い今年はお天気に恵まれ、『地蔵寺納涼際』も予定通り開催され、いよいよ『石原納涼祭』の日、祭りの始まりは西石原文化会館からのパレード。
にぎやかに鳴子を鳴らしながら、踊り子隊と飛び入り参加者の行列が納涼祭会場のコミュニティーセンターまで西石原の通りを練り歩きます。
会場には中央に祭りの櫓が構えられ、テントやベンチの後ろには焼きそば屋、桃アイス、たこ焼き屋さんと一緒に地元ならではの『よしかげさんと甲把兄弟の金魚すくい』などがぐるりと軒を並べ、子供の頃に味わったワクワク感が蘇ってきます。

迫力の祭屋パフォーマンス
『すみれ楽団』の生演奏に合わせ、お揃いの法被を纏った踊り子達が櫓の周りを元気に踊ります。
石原納涼祭では、よさこい祭りで毎年賞をとっている『祭屋』の迫力満点のパフォーマンスがあったり、花火も夏の夜空に2度上がります。
そして祭りのクライマックスは石原納涼祭のテーマソング『ダンシング・ヒーロー』。
大人も子供もみんな満面の笑顔で、何度もくるくる回り踊り続けます。

毎年恒例”よしかげさん金魚すくい”
翌日、奈良からはるばる納涼祭にやって来た奈良県立大の学生が、夏の楽しい思い出が出来たと嬉しそうに話していた中で、「のびのびと楽しんでいる子供たちの姿をここ石原で、いつまでも見ることができますように。」と、誰もが心に抱いた思いを口にしていました。
土佐町最後の夏祭り『野中祭』が終わると、夕方に鳴くひぐらしの声が一際大きく聞こえます。
踊って過ごした平和な里山の夏。
涼しい風が頬を撫でる夕方、感謝の思いで空を見上げると薄桃色に染まった鱗雲が浮いていました。