分類キンポウゲ科オウレン属の常緑多年草
分布日本固有種 本州と四国の山地に生える
概要花期は3~4月
撮影(花)土佐町2023年3月/(果実)土佐町2019年5月
セリバオウレン(芹葉黄連)は葉っぱがセリの葉のように見えることからその名がついたそうです。黄連(おうれん)はキンポウゲ科オウレン属の植物の根茎を乾燥させたもので胃腸薬などの原料になる生薬です。
日本では江戸時代にオウレンの栽培が始まったようですが、昭和50年代には嶺北地域にも栽培のブームが訪れています。戦後の拡大造林政策によって増えてきた人口造林地の林齢が20~30年生に達し、その林床でセリバオウレンを栽培しようとしたものです。
今から半世紀近く前のことですが、実は私もそのブームに乗った記憶があります。一攫千金の夢を抱いて5合ほどの種子を購入し、父親が所有するスギの造林地へ播種したのですが、結局のところ根茎の採集には至らず放置したという顛末です。
セリバオウレンには、今でもよく嶺北地域の道路に近い里山の造林地のあちこちで出合います。恐らくは私の経験と似たような経緯にあるのではないでしょうか。
土佐町ではセリバオウレンの自生は確認されておらず、栽培のために導入された国内移入種(※こくないいにゅうしゅ)だけが存在するようです。
土佐町道下谷線の沿線では今年もセリバオウレンの花が咲きました。10㎝ほどの短い花茎を伸ばし、その先に白い小さな花を2~3個ずつつけています。
杉落葉(※すぎおちば)に被われた林床に見え隠れする緑の葉っぱの間から無数の花茎が立ち並び、おびただしい数の花が舞っています。薄暗い林内の所々、木漏れ日を受けてキラキラ輝く小さな花の光景はなんとも幻想的なものでした。
とは言え、その気で見ないとなかなか目には入らない小さな風景です。
ところが果期の姿は一変します。
受粉を終えると花茎はどんどん伸び始め、4月頃には40㎝ほどになります。その先へ果実を放射状に並べ、一風変わった目立つ姿へと変身してしまいます。
この姿を見て「夜空の花火」を連想する人もいるようです。
※国内移入種(こくないいにゅうしゅ):もともとその地域に生息しておらず、国内の別の地域から人為的に持ち込まれた生物のこと
※杉落葉(すぎおちば):常緑針葉樹のスギの葉は、初夏、新しい葉をつけるとそれに取って代わられるように小枝にくっついたまま落葉する。このことを杉落葉と言い、俳句では夏の季語となっている。