下瀬戸の北の方にコケの土と言う畝続きの薮がある。
そこへ木樵りの親子が木を伐りに行ったと。
昼飯を食べるにお茶を沸かしよったら、子どもが「鉄びんがころぶ」と言うと、親が「鉄びんが上にころぶのは不思議じゃが、下へころぶのは当たり前じゃ、上へころぶと言えばこそ」と言うと、その鉄びんが上にころび上がったと。
そして火をたいた後に、菜葉(なっぱ)がぐっと生えたと。
また、竹が奈路と言う所に一軒家があった。そこへ毎晩「餅くれえ、餅くれえ」言うて来るもんがおった。
餅を毎晩やるのはたまらんから、ある日餅のように丸い石を拾って来て、それを焼いて餅の代わりにやると、焼けたのを食べたもんじゃき、
「こりゃたまらん、水をくれ」と言ったと。それで水の代わりに油をやったと。そうしたら化けの皮がはげて一つ目になって「餅くれとはいつまでも言うが、俺は餅くろうて焼けて死ぬ。」
と大きな声で叫んだと。
すると、ねづきやぶ、えんづがうな、東角屋と言う三つの山で「ほうい」と返事をしたと。
その三ヶ所には天狗がいると言うことになって、その山を作ると祟ると言うて誰も山を作らんようになったと。
町史(「土佐町の民話」より)