隣合う薪小屋と子どもの遊び小屋には屋根がなかった。どちらもそのうち取り付けようと思っていたが、他にもやることがあったので延ばし延ばしになっていた。
ある日、遊び小屋をキレイに掃除しはじめた長女から、雨で部屋が濡れるから屋根をつけてほしいとお願いされた。考えてみれば、薪が濡れたら困るし、いずれ建物も腐ってしまう。じゃあ、やりましょうか、と僕は重い腰をあげた。
使う資材は、家にあるいただきものの木材、捨てずに取っておいたトタンやブルーシート、廃瓦など。購入したのはアスファルトルーフィングという屋根に貼る防水シートだけだったが、後で考えてみると、これも他の廃材(ハウス用のビニールシートとか)で代用できたと思う。「これは買わなきゃいけない」という思い込みからなかなか抜けられない。買うか、作るか、他の方法か、どの選択を取るかは状況によりけりなのだけど。
時間を見つけては、ひとりコツコツ作業をしていたので数日を要したが、幸い雨に振られる前に終えることができた。
完成した屋根のおかげで、もう雨のたびに「薪が濡れちゃうな」とか「床が濡れちゃって、子どもたちが遊べないかな」と気を揉まなくても良くなった。そうか、屋根も、必要なのか。
屋根も、と言うのには訳がある。
笹のいえに住みはじめる前、町営アパートから通いつつ母屋の改修作業をしていた。そのときは、角部屋の錆びているトタンの壁を撤去し、新しく壁を作る予定だった。
壁が無くなり、柱だけとなった空間から目の前の景色が一望できた。テーブルと椅子を置き、淹れたての珈琲を飲んでいると、ちょっとしたカフェみたいでリラックスした。もう壁なんかいらなくて、このままでいいじゃんって思うくらいだった。
しかしその夜、雨が振り出し、風も吹いた。翌朝、この部屋はびしょびしょに濡れていた。
そうか、やっぱり壁は必要なのだな、と納得し、計画通り土壁を作ることにした。
ほとんどの建物に屋根や壁があるが、当たり前過ぎて、その理由を実感する機会は少ない(僕の場合)。無いところからスタートしてみると、その存在理由が身に染みて理解できる。
結論:屋根も壁もあった方が良い