「聞き書き 高知の食事」 「日本の食生活全集 高知」編集委員会 農山漁村文化協会
高知ならではの海の恵み、山の恵みや県内各地で培われてきた食の文化が紹介されています。1981(昭和61)年に出版されたこの本を編集制作するため、県内各地へ聞き取り調査をし、料理の再現や写真撮影など、各地の数多くの人に協力してもらったと書かれています。取材協力者の中には、明治44年生まれの方のお名前も。今もご存命なら112歳。大正時代の終わりから昭和の初め頃の高知の食生活が記された、貴重な本です。もう今では失われてしまったことも記録されていることでしょう。
高知県は祝い事があれば寿司がつくられる「寿司文化」の土地であり、海山にはその地の食材を活かしたさまざまな寿司があることも記されています。さばの姿寿司、山菜寿司、巻き寿司、あめご寿司や鮎寿司など、多種多様。高知県の最東端東洋町には「こけら寿司」と呼ばれる、人参や薄焼き卵で彩られた四角いケーキのようなお寿司もあります。
かしの実の渋を抜いて粉にし、水を加えて煮てかためた「かしきり」の説明や作る様子も。海には海の食、山には山の食。ページをめくればめくるほど、高知がどれだけゆたかな土地であるかを実感します。
2021年に高知県庁から委託された「土佐の郷土料理」動画制作のお仕事で、県内9市町村の郷土料理を撮影して回ったことは貴重な経験でした。海山の恵み、季節ごとの野菜、果物、山菜など、その土地ならではの食材があること。そして、その土地でその土地に根ざした料理を作り続けてきた人たちの存在。それが掛け合わされてその土地の食文化が守られ、作られていることを知りました。その営み自体が高知のかけがえのない財産です。
先人たちが培ってきた食文化を次の世代へ繋ぐ。そのようなことができたらと思います。