一年のちょうど半分に当たる6月30日。
土佐町の白髪神社で「輪抜けさま」と呼ばれる行事が行われました。
高知県では「輪抜けさま」と呼ばれていますが、正式には「夏越(なごし)の祓」といいます。
「夏越は、これを越したら夏ですよ、という意味です。茅で作られた輪をくぐり、半年間の間に体についた病気の元や穢れを払うのですよ」と、白髪神社の宮司である宮元序定さんが話してくれました。
土佐町の7地区(上ノ土居, 大谷, 中村, 南境, 東境, 南泉, 宮古野)の総代が集まり、朝から茅を刈り、大きな輪を作りました。
夏の草花のなかで最も生気がある茅で作った輪を抜けることで穢れを祓い、緑の生気を得て、暑い夏を健やかに過ごるようにといった願いも込められています。
大祓式の神事
まず「大祓式の神事」が祓戸(祓えをするための場所)で行われました。
「四柱(よはしら)」と呼ばれる祓戸の神々の力をいただいて、半年の間についた穢れを祓います。
四柱とは
・川の神…瀬織津姫(せおりつひめ)の神
・海の神…速開津姫(はやあきつひめ)の神
・海底の神…気吹戸主(いぶきどぬし)の神
・根の国底の国の神…速佐須良比売(はやさすらひめ)の神
のこと。
川の神が、川の瀬から大海原に罪や穢れを運んでいく。
そして、海中の潮の入り込んだところにいる海の神が、罪や穢れを大きく呑み込む。
次に海底の神が、罪や穢れを根の国底の国へ、と大きな気を放つ。
そして、根の国底の国の神が待ち受け、罪や穢れはさすらい、失われる。
「この神々の力により、罪や穢れが消えると伝えられてきました。これが祓戸四柱の神様のご利益です」と宮元さんは話してくれました。
「大祓式の神事」は、この日6月30日と、12月31日の大晦日の年に2回、行われます。
宮元さんから「ひとがた」をいただきました。
体全体を「ひとがた」でさすり、3回息を吹きかけ、川やかまち(水路)へ流すとのこと。総代の皆さんは、隣の人と笑顔で見合いながら、腰や膝などさすっていました。
茅の輪をくぐる
そして、宮元さんの唱える「夏越歌」が響くなか、輪をくぐります。
「水無月の 夏越しの祓えをする人は ちとせの命 のぶるとぞいうなり
思うこと みなつきねて麻の葉を きりにきりても 祓いつるかな」
その意味は、
「6月の最後の日に 夏越しの祓えをする人は 千年の命まで伸びると言い伝えられてきた
悔いを残したことや罪、穢れを思えばこそ 麻の葉を切り裂いたものでお祓いをします」
ということなのだと宮元さんは教えてくれました。
輪の左へ、右へ、左へと3回くぐり、正面を抜けてお参りします。
玉串を捧げる
そして本殿の中へ。氏神である「猿田毘古大神」へ、今日お祓いをしたことを報告します。
総代の方たちに続き、編集部も玉串を捧げ、お参りしました。玉串は、榊に紙垂(しで)をかけたもの。榊は、木辺に神と書いて「さかき」と読みます。「榊は、神に敬意を表すものなんですよ」と、宮元さんは話してくれました。
いただいた「ひとがた」は、山からの水が流れるかまちへ流しました。
脈々と受け継がれてきた、この地を守る神さまとの時間。あらためて、地面と繋がり直すとき。皆さんが清々とした表情で帰途についていたことが印象的でした。
*白髪(しらがみ)神社
昭和30年、田井村・森村・地蔵寺村が合併し、土佐町が発足。旧森地区の総鎮守であり、明治時代まで森郷として、郷内28箇所の総天暦28箇所の総氏神だった。現在の森地区は、区画整備により7集落で形成され、鎮座する宮古野地区をはじめ地蔵寺川上に伝い、南泉・東境・南境・大谷・中村・上ノ土居地区の総氏神とされる。