私の同級生、千枝さんの小学校低学年の頃のお話です。
まだビニール紐など無い時代。
みんなそれぞれの家庭が、稲わらで縄を作っていました。
その当時、千枝さんの家には、足踏み式縄ない機があったそうです。
右と左のラッパ管(ラッパの形をした筒)にそれぞれ稲わらを入れ、足で踏むと一本によじられて縄になっていく機械。
ある日の事、おばあちゃんに頼まれた千枝さんは、右側はおばあちゃんが稲わらを入れ、左側は千枝さんが担当。せっせと稲わらを入れ続け、長い縄を作っていきました。
それには、おばあちゃんの甘い言葉。
「ワラを入れるのを手伝うてくれたら、可愛い雨傘を買うちゃおきね。」
その言葉に、千枝さんはしんどくても胸をワクワクさせながら入れ続けたそうです。
やっと仕上がり、おばあちゃんは、約束通り、可愛い雨傘を買ってくれました。
又、そこでおばあちゃんの一言。
「お兄ちゃんと弟には、だまっちょきよ。」
千枝さんは、あわてて少しの間、稲わらの中へ隠しておこうと思い、その傘を突っ込んだそうです。
後日、やっと出せる時が来て、わくわく心躍りながら、傘を出して開きました。
すると、あろうことか、その傘は、ネズミに食べられ、大きな穴が開いていたそうです。千枝さんは、悲しくて悲しくて、涙がポロポロ。
60年たった今でも、心に突き刺さっている想い出…だとか…。
「やっぱり、兄弟に内緒で独り占めはダメやねぇ~」
とは、先日の千枝さんの言葉。
でも、可愛いじゃありませんか!