昔、あるところに、それはべっぴんで気立ても良く、働き者の娘がおったそうな。
しかし、こんな娘にもひとつだけ悩みがあった。芋が何よりも好きで、芋なしでは生きてゆけんほどの芋好きじゃったそうじゃ。
縁談の話もたくさんあったが、なかなか嫁に行こうとはしなかった。そんな娘も親の勧めで、ようやく嫁ぐことになった。両親もたいそう喜んだが、娘を呼んで「ええか、嫁に行ったら、芋が出て三個以上食べたらいかんぞ。おまんは芋を食べたら、へが止まらんなるから。それがもとで離縁でもされたらおおごとじゃ」と言って嫁を案じたそうじゃ。
嫁いだ先の家では、べっぴんで働き者の嫁が来たとたいそう喜んだげな。
嫁も初めのうちは親の言いつけを守り、芋を食べざったが、一ヶ月ぐらいたったある日、どうしても我慢できんなり、芋を食べたと。それから毎日少しずつ隠れて食べよったが、次第に量が増えだした。
そしてある日のこと、姑が息子に「えらい最近、芋つぼの芋が減るが、どうしたもんじょう」と聞いたそうな。息子もわからんかったんで、嫁に「おまんは知らんか」と聞いた。嫁は「あては知りません」と答えたんじゃが、その日はあまりお腹がへっちょったもんじゃき、芋をどっさり食べちょった。
「あては本当に知りません」ともう一度言ったとたんに「プップップップ………」と、へが止まらんようになって、その勢いで空へ飛んで言ったそうな。
まっこと、芋の食べ過ぎは、怖いのう。
和田土良