周囲を山々に囲まれているが、笹のいえは日当たり抜群だ。太陽は南側にある山の尾根をなぞるように、冬でも隠れることなく惜しみなくそのエネルギーを注いでくれる。
洗濯物はよく乾くし、お米や野菜がよく育ち、なにより気持ちが晴れ晴れとする。
数日間雨続きでジメっとした後に、日を見ると思わず拝んでしまう。人間が健康に生き延びるのに日を浴びることは不可欠だと実感する。
笹の暮らしは、お天道様に依存してる。
田んぼで収穫したお米は、はでに干し、天日で乾かす。藁に残った水分が穂についている米一粒一粒にまで行き渡り、甘みを増すと言われる。時間を掛けてじっくりと乾燥させたお米には愛着が生まれ、大切にいただく。天日干しでは乾燥具合にムラが出るため、仕上げに乾燥機にかける。干すことにより含有水分が少ないので、乾燥が短時間で済み、電気や灯油の節約になる。
秋に採れる柿も軒下に吊るして、干柿にする。水分が抜けて、柿の甘みがギュッと濃厚になり、おやつにも料理にも大活躍する。生では食べられない渋柿も天日に当てると甘くなるから不思議だ。長雨だったある年に渋柿をスライスして、薪ストーブで乾燥させたが、渋くてとても食べられなかった。「乾かせば甘くなるだろう」と考えていた僕は、太陽のチカラに驚いたのだった。
春と秋にたくさん採れる椎茸も干す。乾燥させてない椎茸を食べると身体が冷える感覚があるが、干したものは陽性に傾くため食べやすい。生のときとは違った滋味深い出汁が出るし、袋に入れて長期保存も可能だ。
その他にも、千切りした大根、茹でたサツマイモ、海で採ってきたヒジキやワカメ。洗濯物や布団座布団など、とにかくなんでも干してしまう。
これだけ利用してもお金が掛からないなんて、本当に拝まずにはいられない。
天候によって乾燥させきるのが難しいときもあるが、ストーブが稼働していればその熱を利用して、最後の水分を飛ばす。保存はファスナー付きの保存袋に入れて、ネズミが入れない場所に保管したり、冷凍庫に入れたりする。風味が保たれ、カビにくく、長い間楽しむことができる。