「食べ物記」 森枝卓二 福音館書店
私はこの写真集が大好きです。
世界中の食…、米、麦、野菜、肉、魚、保存食、市場…、世界中の人たちが料理したり食べたりといった食卓の風景が収められています。
子どもの頃から「美味しそうやなあ」と思いながらこの本を眺めては、世界はとても広いのだということをどこかで感じていたように思います。「行こうと思ったらどこへだって行けるんだ!」というワクワクが飛び出していくような感覚は今でも心の中にちゃんとあります。
この本をつくった写真家の森枝さんは、以前は戦争の写真を撮っていたそうですが、その仕事をするなかで最も印象に残ったことは「戦争という特殊な状況にあっても、人には日常の暮らしがある」ということだったそうです。
国境近くのゲリラ兵たちが畑で野菜を育て、難民の人たちは着の身着のままであっても多くの人が鍋だけは持っていた…。
食べることは、生きることと切り離すことができないのです。
また、食べることは楽しみでもあります。
今日の食事は何にしようか?どんな風に作ろうか?それとも食べにいこうか?誰と食べようか?
今、こうしている間にも世界中のどこかで、食べるものを育て、食事を作り、食べている人たちがいます。
頭の片隅にそのことを置いておいたら、毎日の食卓がいつもと少し違った風に見えてきます。
鳥山百合子