「犬と歩けば」 安岡章太郎 文春文庫
安岡章太郎(1920.4.18~2013.1.26: 高知市生まれの作家・評論家)は、この本のあとがきで『コンタ(紀州犬♂1966.8.?~1981.1.17)とは15年の付き合いであるが、人間との付き合いよりもよほど長い気がする。しかし、一瞬のうちに過ぎてしまったようにも思う。私の壮年期は、コンタと共にあり、コンタと共に去った。コンタは実に善い犬であった。しかし、どう言い表してよいか表現の術を知らない。つまり、コンタの中に私を超えた優れた資質があったということであろう。コンタを見ていると、何となく慰められたり、励まされたり、そして、生きていることはありがたいことだと思った』と記している。
この本の解説の中野孝次(1925.1.1~2004.7.16: 作家・評論家)は『我々が犬を愛するのは、何千年来、人間に飼われ、馴染んだ生き物でありながら、自然そのものであるからであろう』と。そして「ひとすぢに われを見つむる犬の眼を おろそかにして 生くべきならず(平岩米吉:1898.2.4~1986.6.27 :東京生まれの動物学者・歌人)」を引用し最後に添えている。
さあ、そろそろ良い時間だ。雨は降っていない。
「よう、ポール(ウィペット♂2009.11.12~)。一丁やるか」とジョンになって声をかける。(ポールは耳をたて、頭を上げた)
アップテンポの楽しい時間が始まる。
ずっとこの本は側に置くだろう。
藤田英輔