昭和の頃、私の家には五右衛門風呂があった。
庭の池の向こう側に風呂と便所(いかにも便所という板で作った床のやつ)だけの棟があって、冬の入浴は、風呂から出た途端に髪の毛が凍ってしまい、ドライヤーも無い時代だったので凍えながら布団に入るのだった。
小学3年生から、私がお風呂を沸かす係だった。
夕方になるとカマスの袋をさげて裏山で杉の枯れ葉をひろって来て、それにマッチで火をつけ梶ガラを折ってくべて火にして、風呂の横に積んであるたき木を入れ風呂を沸かしていた。
ある日、いつもの様に裏山で杉の葉をひろい火を付けて、しばらくして、どれくらい湧いたろうかと風呂場へ入り五右衛門風呂をのぞいたら、何と!!水を入れるのを忘れていた。
大変だ!!
空だきをして、おこられると思った小学生の私は、何の考えもなしに水道のじゃ口を思いっきりひねって、空の釜に水を入れた。
とたん風呂釜は、パッキーンと音をたてて割れてしまった。
そこに20センチ位の割れ目が出来ていた。
割れた風呂釜は、周囲をべったりセメントで塗ってあり、釜を取り替えるだけでは済まなかった。
後に風呂と便所の棟を立て替えたのだが、しばらくは、水もれしている風呂釜の割れ目に、ぬか袋をのせて、その上に丸い底板をそーっと敷いて入っていた。
それでも私が風呂を沸かす係だった。
教訓、空だきした鉄の釜は、冷める迄、水を入れずほうっておく事。
小学生だった私にとって、それは大大大失敗として、暗い想い出になっている。