「空色勾玉」 荻原規子 徳間書店(初版:福武書店)
その昔、朝日新聞紙上に「ヤングアダルト招待席」という書評コラムがありました。そこで英米文学の翻訳家で本の目利きでもある金原瑞人氏が熱を込めて紹介されていたのが、荻原規子さんのデビュー作『空色勾玉』でした。
ファンタジ―が大好きで、金原さんの選書眼に一目置いていた私はすぐにこの本に飛びついたのですが…。いや~、面白かった!
英米のファンタジーに比べると日本のファンタジーってどこかドメスティックというかちょっぴり貧乏くさくて(失礼)もの足りないなあと思うことが多かったのですが、これは違いました。 古事記を下敷きに紡ぎだされた世界は、そこに流れる空気感、森羅万象すべてが違和感なく肌に馴染み、親しみ深く、言の葉の国に生まれてよかったと思いながら読み進めていきました。
対立する闇(くら)の一族と耀(かぐ)の一族、彼らが敬うそれぞれの神の思惑に翻弄される水の乙女・狭也(さや)と神の末子の稚羽(ちは)矢(や)。旅あり恋あり裏切りありの波乱に富んだ物語を心ゆくまで堪能し、ファンタジー好きの友だちに端から薦めていったことでした。
デビュー20周年の年に、荻原さんを高知こどもの図書館主催の講演会にお招きできたのは、ファン冥利に尽きる懐かしい思い出です。
古川佳代子