「ぼくの伯父さんの東京案内」 沼田元氣著 求龍堂
仕事に家事・育児をリズムよく廻せているときはいたって愉しい。けれど、なにかの拍子に調子がはずれて、これらに‘’追われ‘’てくると生活は乱れ、心も荒んでくる。
そこにはやはり新聞・雑誌・本などの活字(スマホの字は苦手)のエッセンスを垂らすとあら不思議。心が活き活きとしてくるのがわかる。とにもかくにも生「活」必需品の活字。
それはさておき私の一冊。
著者の沼田元氣さんの本は装丁が毎度凝っていて、手に取るだけでわくわく。
この著書はつるつるした手触りにカドが丸みを帯びていて、広げるとやわらかな雰囲気。
そこに昭和の薫り漂うなにげない東京の街角のノスタルジィな風景写真とともに、著者ご本人である“伯父さん”のすきなモノ・コトが綴られている。
たとえば伯父さんのすきなモノ・コトは
一雨上がりのにおい
平日の昼寝
寂しそうなノラ犬
トワイライトタイム
少年のはいている肉色のタイツ
老舗洋菓子店の包装紙
大倉陶園のカフェオレマグ
古いB級映画のサントラ‥などなど、、
数えきれないほどのたくさんの伯父さんのすきなモノ・コト。
伯父さんの伯父さんによる伯父さんのための確固たる美的感覚に基づいたモノ・コトではあるけれど、決してそれを押しつけることなく、その純粋で素敵な世界観に惹き込まれいつの間にかうっとりと夢のようなひとときとなる。
一誰しも自分のすきなものに囲まれてはじめて人は生き生きとし、原動力となる
“〜すべき”
“〜せねばならない”
と勝手に自分で自分を縛りつけたせいで心が疲れて、道に迷うたびにこの本を手に取る。
東京を案内しているといいながら、
実は伯父さんに心の道案内をしていただいていることに気づいてしまった。