朝7時、土佐町の猟師である上田義和さんから電話がかかってきた。
「もしもし、鹿の角がほしいって聞いたんやけども」
「え…!?そうですそうです、ほしいです!」
以前も上田さんから鹿の角をいただいたことがあった。これで2度目である。
「高橋通世くんから“鹿の角、あるかよ?”って連絡があって。うちにいくつかあったから、届けちゃろうかと思って」
なんと!
猟師さんのネットワーク
「高橋通世」さんは、私たち編集部が大変お世話になっている猟師さんである。編集部で制作している「鹿の角ガチャ」の原料である鹿の角の在庫がほぼなくなり、通世さんに「鹿の角があったら分けてほしいです」と冬に連絡したことがあった。
通世さんは、「春になったら鹿の角が生え変わるから、手に入ると思う」と言っていたが、猟師仲間の上田さんにも声をかけてくれていたのだった。(次の日、通世さんも鹿の角を届けてくれた。)
「持って来てもらうのも申し訳ないので、取りに行きます」
と言うと、
「いや、出ていく用事があるき、その途中で寄るき。7時10分くらいに家を出るから」
とのこと。
なんと、ありがたい。本当に、ありがたい。
角は生まれ変わる
上田さんに会ったのは久しぶりだったが、変わらぬ笑顔でうれしかった。袋からはみ出ている鹿の角は針金で二本ずつ組み合わさっていて、ずしりと重い。
この鹿の角が、角を切って紐を通す穴を開けてくれる渡貫洋介さんや、仕上げの作業をしてくれる大豊町のファーストの皆さんの手を通り、鹿の角ガチャに生まれ変わる。
上田さんが乗り込んだ軽トラックを見送りながら、たくさんの人の助けや思いがあって、今の仕事の現場が成り立っていることをあらためて感じた。