(2024年5月27日追記:潔さんは現在98歳。この連載を開始したのが95歳の時だったので、題名はそのままとしています。)
カナバ
現在は、あまり見かけませんが、昔は雨着といえば蓑笠(みのかさ)だったのです。蓑は山の菅(すげ)という草を、乾燥させて編んだもの。笠は桧の木を薄く削ったもの。
カナバを形良く一定の巾に手で編んで、帽子の様に縫い合せたものを「キガサ」ともいっていました。最初は手仕事で、一ヒロ何銭で編んでいて、雨の日や、少しの間を見ての農家の女の内職でした。
「キヨも編んでみや」とカカヤンに云われて、始めたら面白く、暇さえあれば弟を負っていても、胴にくくり付けて、編んだ記憶があります。兄もたまには編んでいたので、兄、母、私と三人で、一定の時間に、誰が一番長く編むか、競争した事もありました。
印をつけて、「ヨーイドン」で頑張って、何時も私が一番長かった。
カカヤンの計略に、マンマとやられました。編み終ったものを8の字にまとめて、負って行って、次に編む品をもらって来るのでしたが、お金をもらった事が嬉しくて、頑張ったのでした。
お金を入れた布の袋を握りしめて帰り、小使いを一銭もらって何よりも嬉しくて、近所に「ケイサン」という、おんちゃんくのおばさんが「テツボー」を売っていたので、一本一銭で買えたのです。
帰り道しゃぶりながら、スキップで帰って来たのでした。モモタロサンの唄でも唄っていたカモネ。
カナバ屋さんは、駒野という所にありました。