古川 佳代子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「いしぶみ  広島二中一年生全滅の記録」 広島テレビ放送 編 ポプラ社

表紙を開くと見開きには石に刻まれた名前が…。これは、広島二中慰霊碑に刻まれた子どもたちの名前です。

昭和20年8月6日。その日、子どもたちは世界で最初の原子爆弾により自分の命が絶たれることなど露とも知らず、家族にいつものように挨拶をし、家を出たのでした。

広島に原子爆弾が落とされた時、20数万の方が命を奪われ、多くの人が原爆症で苦しみ、今も原爆病院には長い入院生活を送っている患者もいるのです。「20数万人」「多くの人」「患者」と文字にするとなにか一つの抽象的なもののようにも感じられますが、その単語の向こうには、言葉のなかには一人ひとりの個人がおり、それぞれには家族があり、生活があり、夢があり、「明日」があったはずなのです。

ひとくくりにすることで見えなくなりがちな一人ひとりが、どのような子どもであったのか戦時下ではあっても家族との語らいを楽しみ、友達を笑いあい、今日が明日に続くと信じていた子どもたち。誰一人として奪われてよい命はないのに、簡単に奪ってしまい奪うことが正義となる戦争。

戦後75年といわれる今日が「戦前」とならないよう読み継ぎ、手渡したい1冊です。

 

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私の一冊

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「窓ぎわのトットちゃん」 黒柳徹子 講談社

今を去ること40年前の大ベストセラー。読んだことのある方は多いでしょうし、読んでなくても書名に覚えのある方もおありでしょう。

“これは、第二次世界大戦が終わる、ちょっと前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに、ほんとうに通っていた女の子のことを書いたお話です” ではじまる本当にあった物語。 周りの空気を読むとか、同調するとか忖度なんか一切ない、好奇心旺盛で心のままに行動するトットちゃん。何をしても何を言ってもまるごと受け止めて「君は、本当は、いい子なんだよ!」と声をかけてくれる校長先生。

子どもたちに関わる大人がみんなこの校長先生のようなスタンスで子どもに関わっていければ、子どもにとってどんなに生きやすい社会となることか…。

 

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「プラスチック・フリー生活」 シャンタル・プラモンドン, ジェイ・シンハ著 服部雄一郎訳 NHK出版

海や山、あるいは清流で豊かな自然を愛でているときに足元や水面にあるプラスチックごみを目にして、一気に興醒めした経験はないですか?

プラスチック汚染の問題はわたしたちの身近にあり、健康にも深くかかわっています。けれども、プラスチック製品に囲まれた環境でのなかで、一気に減らすのはなかなか難しいこと。あまり神経質にならず、「できること」をさがして、ゲーム感覚で取り組んでみると意外に楽しく実践できるかも?

気負わずに始められる「プラスチック・フリー生活の実践ガイド」として、家庭に一冊常備するのもおすすめです。

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「火星にいった3人の宇宙飛行士」 U・エーコ作, E・カルミ絵 海都洋子訳 六耀社

地球の上の3つの国から、ロケットが打ち上げられました。アメリカ、ロシア、そして中国。飛行士たちはお互いに何を言っているのか分からず、お互いに変な奴だと思っていました。

けれども火星に到着し、そこで出会った怪物に比べたら、自分たちのちがいなど些細なこと。地球から来た三人はたちまち力をあわせ、火星人を倒すことにします。そのとき…。

哲学者で思想家、優れた文学者でもあるウンベルト・エーコの含蓄ある文章とエウジェニオ・カルミによる想像力を刺激する抽象画のコラボによる、風刺のきいた絵本です。

古川佳代子

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 「フラミンゴボーイ」 マイケル・モーパーゴ 著, 杉田七重 訳 小学館

児童文学やYA小説を「小学生の読む本」とか「中高校生向けの本」と受け止めているかたは多いように思います。でもそれはちょっと残念な誤解です。小学生から、あるいは中学生くらいから「読みこなせる本ですよ」ということで、決して子どもだけを対象とした作品ではありません。

マイケル・モーパーゴは優れた児童文学・YA小説の書き手の一人です。第二次世界大戦下を生きのびる人々をテーマにした作品の多いモーパーゴですが、厳しい状況であっても決して失わない人類への信頼と希望を描ききる筆力に、毎回圧倒されます。 本書では第二次世界大戦のフランスを舞台に、ロマの少女と他者との意思の疎通が困難な少年、そして少年がこよなく愛するフラミンゴを主軸に据え、戦時下において最も迫害を受ける弱者の視線から、戦争の理不尽さが語られています。

古川佳代子

 

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「和菓子のほん」中山圭子 文, 阿部真由美 絵 福音館書店

その昔、マリー・アントワネットは飢えた人々に向かって「パンがないのなら、お菓子を食べればよいのに」といったとか。
そんな不遜なことを言うつもりはさらさらないけれど、ごはんがなくてもお菓子があればそれでよい、と思うくらいにはお菓子が大好きです。カスタードクリームたっぷりのシュークリーム、栗の風味がうれしいモンブラン。食べ応えのあるケーキもよいのですが、和菓子にはどこか別格の佇まいがあります。ほんの二口、三口で食べ終えてしまえる小ぶりなお菓子なのに、その繊細な形や色遣いとそれを引き立てる雅な名前。

日本ならではの和菓子の色や形、名前の美しさなどをあまさず伝えてくれるのがこの絵本です。四季折々の美味しそうな和菓子とあわせて日本語の響きもお楽しみください。

古川佳代子

 

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「俳句歳時記  夏」 角川書店編 角川ソフィア文庫

数年前、大先輩から句会に誘われました。全く素養がなく迷惑をかけるだけなのでと固辞したのですが断り切れず、仲間に入れていただきました。句集を読んだり句会で他の方の作品を拝聴するのはとても楽しいのですが、句作のほうは冷汗三斗。楽しいはずの句会が苦界になることもしばしばでした。

そんな中、ベテランの方が紹介くださったのが角川書店の俳句歳時記全4巻。藁にもすがる思いで買い求め、折あるごとに広げては「どうすればこんな句が読めるのだろう」と羨ましく思いながら、17文字の世界を遊びました。

市内を離れ句会への参加は難しくなってしまいましたが、せっかく素敵な地に住まうことになったのですから、ぼちぼちと勉強だけは続けていきたいと思っています。

古川佳代子

 

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古川佳代子

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「天使のにもつ」 いとうみく 童心社

中学生の職場体験を受け入れたことのある方もいらっしゃると思います。やる気が空回りする子もいれば、そんじょそこらの大人よりも役に立つ子もいて大助かりの時もあります。しかし、どんな場合も一番試されるのは受け入れる大人だということに変わりはありません。

主人公の斗羽風汰は中学2年生。5日間の職場体験先を「楽そう」とエンジェル保育園を体験施設に選びます。事前面接では思惑通りの職場だと思ったのですが、保育園児と向き合う仕事はそんな甘いものではありません。言葉遣いや仕事ぶりを保育士どころか園児たちにもダメだしされる風汰。それでも少しずつ風汰は命を預かる保育師の責任や、やりがいなどに気が付いていきます。

たった5日間のことですから風汰が大きく変わったり、目覚ましく成長するわけではありません。けれども小さな気づきはあり、それが今後の風汰の成長の大きな糧になるのではないかと感じられます。風汰から小さな変化を引き出したのは、受け入れ先の保育園の園長先生や保育士のたちのさりげない対応の数々です。 こういう大人に出会える子どもは幸せだなあと思いつつ、わが身を振りかえって反省したことでした…。

古川佳代子

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「家守綺譚 」 梨木香歩 新潮文庫

「影との戦い」(アーシュラ・K.  ル=グィン)のゲドに出会ってから今に至るまで、私の理想はゲドですが、もう一人愛してやまない男性が綿貫征四郎さん。不慮の事故で亡くなった大学時代の友人・高堂の家を守りながら、文筆業で何とか糊口をしのいでいる、新米のちょっと頼りない精神労働者です。

本書では、100年ほど昔の“あわい”に生きるものと征四郎の生活が少しだけ重なったときにおこる出来事が端正な日本語で綴られています。 庭のサルスベリに恋心を抱かれてしまいからかわれると「木に惚れられたときにどうするべきか、またどうしたいのか、まるで思いもしないことだった」と真剣に考え込む征四郎さん。

けれども黄泉の人々に何も思い悩むことのない理想の生活に誘われた際には「そういう生活は、私の精神を養わない」とキッパリ断ります。

世間と少しずれてはいても、人間としては決してぶれない自分がある綿貫征四郎さんは、ゲドに負けず劣らず素敵です。

古川佳代子

 

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「岡潔 数学を志す人に」 岡潔 平凡社

科学的愉快にも数学的自由にも全く興味はなく、もちろん数学を志すなんて露とも考えたことはありません。わたしには一番縁遠い本だなあと思っていたのですが、いろんな偶然が重なって「読まねばなるまい」と意を決して手にとりました。

ところが意外や意外、面白いのです。共感することが多々あって、さくさくと読める読める。あまりに面白くて我ながら不思議だったのですが、数学する、を文学するや思考する、に脳内変換して読んでいるからだとハタと気がついて納得した次第。

「数学の研究を知的にやり、あるいは意志的にやる人はいるが、まだ感情的にやるところまではいっていない」とか「数学は起きている間だけやっているのではない。眠っている間に準備され、目ざめてから意識に呼出し、書き進めているような気がする」などなど。

岡潔は数学者ですから「数学」になるけれど、音楽家や画家、あるいは一般人である私にも、それぞれが生きるうえで大切にしているものがあり、それに置きなおせる普遍的なものについて、数学者らしい知的な語り口で綴られています。

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