「もりのかくれんぼう」 末吉暁子作, 林明子絵 偕成社
このお話の主人公けいこが家に帰る途中、お兄ちゃんを追いかけて生垣の下をくぐり抜けると、そこには金色に色づいた森が広がっていました。
けいこは、この森の「もりのかくれんぼう」とかくれんぼをすることに。きつねやりす、くまやトカゲなど森の動物たちも加わって、みんなであっちに隠れたりこっちに隠れたり。(ページをめくりながら、「あ!ここにいる!」と見つけるのが楽しいです)
くまが鬼になった時、けいことかくれんぼうはしげみの中に潜りこみます。「いきをころして、じっとして、みつからないように、いつまでも…」。
ふと聞こえてくるお兄ちゃんの歌声。そっと顔をあげると、目の前にお兄ちゃんが立っていて、けいこの住んでいる団地が広がっています。ところどころに金色の森に生えていた木が立っていて、団地ができる前はあの森だっただろうことを想像させます。
この本が出版されたのは1978(昭和53)年。昭和30年代から昭和40年代にかけて、高度経済成長期にあわせて団地の建設が盛んに行われたため、森を切り開いて作った団地に住んでいる子供たちも多かったことでしょう。
「どこかできっと またかくれんぼうさんにあえる けいこはそんなきがしてなりませんでした」
かくれんぼうや森の動物たちはどこへ行ったのか。当時も今も、この絵本を読んだ子供たちはどんなことを感じるのでしょう。