「昭和こども図鑑」 奥成達 文, ながたはるみ 絵 ポプラ社
昭和30年代、当時は全員で映画を観るという小学校の学校行事がありました。田舎の小学校で、子どもたちに文化的な娯楽のチャンスを与えてくれたのでしょうか。私の小・中学生の頃、それはそれは時間の流れがゆったりしていました。
この本に載せられている生活の道具や様々なあそび。庶民の暮らしぶりは本当に懐かしい。今よりずっと不便で貧しかったけれど、素朴であたたかい人情があり、暗黙の規律やルールが人々の中にあって生きやすかった気がする。
セピア色になってしまった今は亡き家族、かわいがってくれた親族、近所の人々、子どもだった自分の様々な出来事が、くるくるくるくる蘇って、何だか胸がいっぱいになりました。
*「マタンゴ」という映画を見たことがありますか?
難破船が流れ着いた島で食物を探していると、森の奥にキノコが大量に生えており、それを食べると体からニョキニョキとキノコが生えて、ついにはキノコのバケモノになってしまう…。「おいしいよ、おいしいよ」と手招きしつつ、体がキノコに侵略されてゆく気味悪さ。世にも恐ろしい内容で、子ども心に強烈な恐怖心が植えつけられ、夜中のトイレがイヤだったこと(笑)。この映画を小学校の総見で1年生から6年生まで全員で観たのです。「先生、どうして“マタンゴ”を選んだの?」と今でも不思議(笑)ですが。
藤田純子