「ヒナゲシの野原で~戦火をくぐりぬけたある家族の物語~」 マイケル・モーパーゴ 評論社
マルテンスの家の玄関には額に入った紙っきれがありました。その「紙っきれ」にはえんぴつで詩が書いてありました。
フランダースの野にヒナゲシの花がゆれる 何列も何列もならぶ十字架の間に。
空にはヒバリが 勇敢にさえずっては飛ぶ 砲声に声をかき消されながらも。
俺たちは死者。ほんの数日前まで、 生きて、夜明けを感じ、夕焼けを目にし、 人を愛し、人に愛されていた。
だが今、俺たちは横たわる このフランダースの野に
この紙っきれを持って帰ってきたのはおじいちゃんのお母さん、マルテンスのひいおばあちゃんのマリーでした。
ある日おじいちゃんはこの詩とおばあちゃんのことを話してくれました。その日から、マルテンスにとってもこの詩は大切なもの、お守りのような存在になるのでした…。
第一次世界大戦後、英連邦の国々では戦没者追悼記念式典を11月に行ないます。その折、追悼する兵士のシンボルになるのは赤いヒナゲシの花。永遠に戦争がなくなり、世界の人々が和解し、愛し合い、平和に暮らせる日がいつかきっとくる、という希望の象徴になぜヒナゲシが使用されるようになったのか。その由来が語られる巻末もぜひお読みください。