5月。
車を走らせていると川沿いや山の斜面に鮮やかな黄色の花が固まって咲いているのが目に飛び込んでくることがあります。
マメ科のジャケツイバラ(蛇結茨)です。
土佐町駒野の国道439号沿いでは川岸の竹に絡みついて異彩を放っていました。
つる性の落葉低木で、茎と葉の軸の裏面にある鋭くて丈夫なトゲが特徴の植物です。
トゲは次第に強く発達して人を寄せ付けない様になり、さらに花の後にできる果実は有毒と云われることから益々人を遠ざける存在になっています。
蛇結茨。
その恐ろしげな名前の由来は、大和本草(※やまとほんぞう)の「其の茎、蛇の結ばれたるに似たゆえ、じゃけつと云う」の一文からきているそうです。
枝がもつれ合う様からヘビ同士が絡み合っているように見えることから命名されたというものや、茎の鋭いトゲがヘビをも刺してしまうという意味だとする説があります。トゲのある茎は成長すると灰黒色になり、蛇のような太さとなってとぐろを巻いたヘビの姿に見えるからともいわれます。
葉っぱも特徴的です。
1個(枚)が長さ20~40㎝にもなる大きな偶数羽状複葉で、3~8対の羽片をつけ、各羽片には5~12対の小葉があります。
羽状複葉というのは鳥の羽根のような形になる葉のことで、ジャケツイバラの葉は先端に小葉2枚が対になってつく形態をしていることから偶数羽状複葉と呼ばれます。
花は鮮やかな黄色です。
枝先に長さ20~30㎝の花序を直立させて多数の花をつけるので、遠くからでもよく目立ちます。
何となく藤の花を逆さにしたような雰囲気で、大和本草には「じゃけついばらは河原に生ずる蔦草なり。形(かたち)藤に似たるがゆえ、かわらふじと名づく」という記述もあり、別名をカワラフジ(河原藤)と云います。
ちなみに藤の葉は、先端に小葉が1枚しかつかない奇数羽状複葉です。
マメ科植物の花の多くは蝶形花(※ちょうけいか)ですが、ジャケツイバラはバラ科に近縁な植物から進化したとものと考えられており、花の形が一般的なマメ科のものとは異なります。
花弁は5個あり、上側の1個だけがやや小さくて赤い網目紋が入ります。10本ある雄しべも赤く、全部が集まって突き出ています。
きっと、この花弁の模様と長い雄しべの赤色で花粉を運ぶ昆虫を誘っているのでしょう。
※大和本草(やまとほんぞう):1708年に貝原益軒が著した本草書(薬物についての知識をまとめた書)
※蝶形花(ちょうけいか):花びら5枚のうち上側に飛び抜けて大きく目立つ1枚があり、左右相称で蝶の形に似た花(ハギ、フジ、エンドウなど)