真冬のこの時期になると、梶蒸しの事を思い出します。目を閉じると、懐かしい焼き芋の香りと、梶を蒸した香りがよみがえってくるようです。
私が小学生の頃は、冬に各家が総出で、土佐和紙の原料となる梶蒸しが行われていました。梶は、直径2メートル位の釜に、ひとかかえ位の束にくくった梶の木を10束位(だったかな?)、こしきの中に立てて入れて、高さ2メートル程の木おけをかぶせ、2~3時間蒸して柔らかくした後、女性と子供が1本ずつ皮をむいていく。
大人は木の杭を垂直に立てて、はぎ始めを作った梶を通してひっぱり、皮をむいていく。男性達は、その間に次の梶を蒸す。
沢山のたき木をくべて蒸すので、皆が食べられるように、さつま芋を灰の中にほうりこんで、ゆっくり焼き芋にする。その焼き芋の美味しいこと。それを食べたいので梶はぎを手伝うのです。
結(ゆい)で、各家々の梶の木を蒸してははぐので、4~5日かかって梶蒸しの行事は終える。剥いだ梶の木の皮は、各家庭がリヤカーで持って帰り、自宅の庭先や畑の畦に竹で干し場を作り、竹ザオをひっかけて皮を干して、夕方は夜露がかからないように片付けて、翌朝に干す。大変な作業で、梶の皮は出来上がる。それは冬場の大事な収入源だったと思う。
皮をはがれた梶の木は乾燥したら、梶ガラといって、風呂の焚き付けや炭をいこす時の火種にしたりと、一年中重宝していた。
今では梶蒸しの行事は、時折新聞紙上で記事を見かけるぐらいで実際に見ることはないけれど、冬になると、焼き芋の香りと懐かしい思い出が蘇ってくる。