2021年1月から2月にかけて高知県内9市町村の郷土料理を撮影し、製作した動画をご紹介しています。
第7回目は、安芸市入河内地区で作られている郷土料理「かしきり」です!
かしきりってなあに?
かしきりは、かしの実で作られた豆腐のこと。干したかしの殻をはぎ、実をミキサーにかけ、三日三晩水をかえながらアクを抜きます。そして、それを煮詰めて、固めるという手間隙がかかる郷土料理です。
昔、朝鮮半島から伝わったといわれ、韓国では「トトリムッ」という名で今もよく食べられているとのこと。かしの実を粉にしたものも販売されていて、各家庭でよく作られているそうです。
撮影のために、高知県安芸市入河内地区でかしきりを作ってくれた有澤淑江さんは、現在87歳。子どもの時はミキサーなどはなかったので、かしの実を石臼で挽いていたとのこと。「昔、若い人たちが仕事に出ている間、家で留守番しているおばあちゃんがよく作っていた」と教えてくれました。
当時は、石臼で挽いた粉を布袋に入れ、山水に晒してあくを抜いていたそう。食料が少なかった時代、身の回りにあるもので何とかやっていこうと知恵を絞った人たちの苦労が偲ばれます。
高知名物「葉にんにくのぬた」をかけて食べる
かしきりは、そのままだとほぼ味がないので、「葉にんにくのぬた」をかけて食べます。畑で収穫したばかりの葉にんにくをすり鉢ですりすり…。辺りには、にんにくの香りが広がります。続いて、味噌やごま、砂糖、柚子酢などを加え、かしきりにかけて食べます。
想像していた以上に美味しくて、ぬたの風味を味わいながらいくつも食べました。
かしきりの風貌がくず餅のようにも見え、家で黒蜜をかけて食べてみましたが、こちらも美味しかったです!
動画タイトル作者は本山町・りんどうのメンバーさん
動画のタイトル文字を描いてくれたのは、土佐町の隣町、本山町の障がい者支援施設「りんどう」のメンバーさんたちです。とても楽しんで描いたり作ってくださったと聞いて、とてもうれしかったです。ありがとうございます!
かしの実は笑う
毎年10月頃、有澤さんはたくさんのかしの実を拾います。「天気の良い日に拾ってきたかしの実を干すと、『ぱちっ、ぱちっ』と殻が割れるんよ」と話してくれました。その割れ目がにっこりと笑っているように見えることから、殻が割れることを「かしの実が笑う」というそうです。
こういった言い方ひとつとっても、自然とともにある生活の中に、ちょっとした楽しさを見つけようとしていた人たちの心意気を感じます。
郷土料理の後継者
有澤さんは、現在87歳。安芸市入河内地区でかしきりを作ることができるのは、有澤さんだけだと聞いています。郷土料理を作ることができる人が高齢化し、後継者がなかなか見つからないという現状は、安芸市だけではなく高知県全体、日本中が抱えている問題でもあるのだと思います。
今回、高知県各地で動画を製作したのは、その地の郷土料理の作り方や、作り続けてきた人の姿を残したいという高知県庁の思いがあってのことでした。
各地で引き継がれてきた郷土料理はかけがえのない文化です。その文化を引き継ぎ、次の世代へバトンタッチする。
そういったことが少しでもできたらいいなと思っています。