クロにするのにクロウする
田の畦に打ち込んだ棒を真ん中にして、時計回りに草の束を巻き付けていく。一人ではできない共同作業だ。巻き付けていくにつれ高くなっていくので、ハシゴをかけて作業する。最後の束は「傘を着せる」ように、全体を巻き込むようにしてくくりつける。こうすることで内側に雨が入らないようになるという。
そして、風で倒れないように紐を張って完成。
「いやー、きれいになった!」
二人とも満足そうな表情だ。
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クロを積む西村さんと奥さまの佐枝子さん
それにしても、この作業量は並大抵ではない。
「クロにするのにクロウ(苦労)するがよ!」
まさに!という田岡さんの名言。笑い声が辺りに響いた。
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冬、クロをほどいて田にばらす。この後、トラクターでたたく(写真提供 西村卓士)
完成した「クロ」はこのまま置き、12〜1月になったら「クロ」の束をほどいて田にばらし、土をたたく(耕す)。
「冬は水田が凍りつくから虫もよく死ぬる。この時期が一番いいんじゃ」
こうして迎えた春、「クロ」はその年の米を育てる土壌になる。
「病気に強い、うまい米ができるんじゃ」
西村さんも田岡さんも口を揃えた。
「クロを積む 3」に続く