宿をやっているといろんな人がやって来る。
農的自給的な暮らしを実践している人、移住先を探している人、環境への負担を考え、オフグリッドな旅をしている人などなど。県外はもちろん、海外からも笹に遊びに来てくれる。
彼らに会おうと思ったら、時間的にも金銭的にも膨大な量が必要だけど、自分の場所をオープンにすると、向こうから来てくれるのだから、これはお得すぎる。
この日は、ピザ屋さんが来てくれた。
香川県のイベントでヒトシくんと初めて会い、しばらく四国を旅すると言うので、笹にもぜひ寄って行ってよと話をしたら、翌日に来てくれた。
彼は軽トラを改造し、故郷北海道を出発。日本を旅している。荷台には小さな家が載っかっていて、自作したロケットストーブ型のオーブンとソーラーパネルで稼働する冷蔵庫がある。さらにシンクや手動で動く洗濯機、移動式のコンポストトイレまであるから暮らすように旅をすることができる。
笹に到着すると、早速オーブンに木をくべて、ピザを焼いてくれることになった。
突然現れた車に、子どもたちは大興奮。だって、詳しいことはよく分かんないけど、ヘンテコな車から大好物のピザが焼きあがって出てくるなんて、なんだかおとぎ話のようだもの。
ピザはどんどん出来上がるのだが、それ以上のスピードで僕らのお腹の中に消えていった。オーガニックにこだわるヒトシくんの作るピザは、古代小麦粉にグラスフェッドチーズ。しかも焼きたて。美味しくないわけがないのである。
気の向く場所を訪ねながら、お世話になった人にピザを振る舞ったり、必要なものを物々交換し、また次の目的に移動するのがこの旅のスタイル。彼が出会った人とのご縁は、きっと彼の一生の宝物になるのだろう。
今回のピザは、薪とビールそして一晩の寝場所と交換となった。渡した薪は誰かのピザを焼くことになる。受けた恩をその人に返すだけでなく、次の人に渡す「恩送り」。笹の暮らしとも重なる部分がたくさんありそうだ、ヒトシくんと夜遅くまでおしゃべりをしながらぼんやり考えた。
四国の後は九州に渡り、そして沖縄へと旅は続くそうだ。
この軽トラを見かけたら声をぜひ声を掛けてみてほしい。車の中から、魔法のように美味しいピザが出てくるかもしれない。