早明浦ダムの道路周辺には緑花木が沢山植栽されていますが、その中の一つにタラヨウという木があります。点々と生育しておりその多くは樹高10mを超える大木ですが、上吉野川橋の南詰に高さ4~5mでギッシリと赤い実をつけた木があります。今年はこの一本が異彩を放っています。
タラヨウは雌雄異株(※しゆういしゅ)で、雌株には2~3年おきに実がつくようです。
タラヨウの葉は長さが20㎝ぐらいあります。裏面に爪楊枝など尖ったもので傷をつけるとその部分だけが黒く変色して長期間残る性質があります。この性質を利用し、かつては紙の代用として僧侶が写経や学問、さらには通信にも利用したとか。
紙が希少であった戦国時代にもタラヨウに文字を書いて情報をやりとりしたという記録が残っているそうです。
またこの葉を火で炙ると黒い模様が浮き上がります。奈良時代には、その模様を占いに用いるため寺社に多く植樹され、特別な樹木として大切にされてきたということです。
タラヨウは古代のインドで手紙や文書を書くのに用いたヤシ科のタラジュ(多羅樹)に因んでつけられた名前だそうで漢字で多羅葉と書きますが、「ハガキノキ」「ジカキシバ」「エカキバ」「モンツキバ」など別名の方が有名です。その意味は、漢字を充ててみればすぐに分かります。
紙の切れっ端などに書く覚書を「端書(はしがき)」と言いますが、これが郵便はがきの語源です。ところが「端書」ではなく「葉書」の字を当てたのはタラヨウの葉に由来するという説があり、1997年には当時の郵政省が緑化を推進するためタラヨウを郵便局のシンボルツリーとして定め、全国各地の郵便局にその植栽を奨励したそうです。
それによってタラヨウは「郵便局の木」という別名を備え持ちましたが、その後の郵政民営化に伴いその意味合いはだいぶ薄れてきている様です。
それでもタラヨウを植えている郵便局は今もあります。
高知東郵便局前のタラヨウ
木のそばに立つラベル
私が知っているのは高知市介良の高知東郵便局で、ラベルには [郵便局の木「タラヨウ」 Symbolic tree of post offices“TARAJO” 平成12年9月植樹]と記されています。
因みにタラヨウに限りませんが葉っぱの郵便は現代でも利用できるということで、物は試しと実際に送ってみました。全5通の内の1通を自分宛にして、間違いなく届くことを確認しました。
散歩がてらにタラヨウの木を探し、はがきを書いてみると楽しいこと請け合いです。
ただしはがき1通の郵便料金は63円ですが、郵便規定では長方形以外は「定形外」扱いとなり、タラヨウの葉っぱの場合の切手代は120円でした。
※雌雄異株(しゆういしゅ):雌花(めばな)と雄花(おばな)を別々の株につける植物