「土佐町のものさし」を作る。
目的は、「町の人々が幸せを感じる町」になること。
でも、どうやって?
この旅の話は、土佐町がこれからやろうとしているGNHのことから始まります。
なぜならGNHを発案し実践しているヒマラヤの小さな国ブータンでは、実に91.2%の国民が人生を「幸せです」と考えているという結果が出ているのです。(2015年度幸福度調査による)
これを参考にしない手はないですよね。
GNHって一体なんですか?
本当はこっち。GNHは「経済も含めた幸福の全体量を計ろう」というものさし。
GNHという考え方、これはそもそもブータンの前国王(4代目)が1972年に言い出したことでした。
1930年代にアメリカで考案され、一気に「豊かさ」のものさしとして世界的な尺度になったGDP(GNP)=国内総生産。世界各国はGDPが何位になった、または落ちたという競争の真っ只中にいました。
ブータン国王は、端的に言えば、その時代に(現在も)支配的な考え方であるGDP/GNPでの比べ合いに、敢然と異を唱えたのです。
GDP(稼いだお金の量)を比べて伸ばすだけでは、幸せな社会は作れませんよ
と王様は言いました。それ以降ことあるごとに
GNH(国民総幸福量)はGDP(国内総生産)よりも重要です
と公の場で発言しています。
ブータン国王が言ったことの意味
それは、なぜならGDP(国内総生産)とは、お金のやりとりの量を計った数値にすぎないから、ということです。
ひとつの国の中で、どのくらいの量のお金がやりとりされたのか
単純化して言うと、GDP/GNPというものさしで測れるのはそういうことなのです。
この数値はシンプルなお金のやりとりの量なので、それが幸せなやりとりか不幸せなやりとりかはまったく関係ありません。
たとえば‥
●交通渋滞がひどくて、ガソリンの購入量が増えた(ガソリンに費やすお金が増えた)
●大きな災害が起きて、お葬式が増えた(お葬式に費やすお金が増えた)
上の例はどちらも、人間の幸福感・または生活の質にとってはマイナスになる可能性の高い要素です。
交通渋滞がひどければイライラして生活の質(幸福感)は下がっていくはずですが、ガソリンの購入量(消費量)は増えるので、お金のやりとりが増えます。するとGDPというものさしの上ではプラスになっていく。
人間が幸せになっていないのに、GDPというものさしの上ではなぜか「豊かになった」とされるのです。
「人間の豊かさを計るものさし」としてGDPが不適切という指摘があるのは、こういう理由があるのです。
それじゃあダメダメ〜と言いながら、ブータンという小さな国が、GNHという新しいものさしを持って国際社会に登場してくるわけですが、それはまた次の機会に話しましょう。今回、羽生さんは関係ありませんでした。