前シーズンの搾りでは長女を連れて行ったので、今回は長男に声を掛けた。一度誘ったときは、その期間中に友達の誕生日会があるので「行かない」宣言したが、なんとその友達が彼のために日程を変更してくれたので、めでたく同行することになった(ナナちゃん、ありがとう!)。
子どもを連れて行くのは、普段の生活とは違う経験をしてほしいからだ。自分たちとは異なる暮らしをする人たちと出会い、交流し、遊び、食べ、寝る。それらのイベントを通して、「この世には、いろんな人が生きている」ということを彼らの世界観に加えてもらえたらと思っている。今回は土日を含めて五日間の旅だったので、学校は三日休んだ。
片道10時間、狭い軽トラの車中でどう時間を過ごすかと少し心配していたが、彼が持ち込んだナゾナゾ本の問題を解いたり、サービスエリアのお土産コーナーを回ったりした。トキさん宅では、11歳の末っ子娘さんとよく遊んでいた。ボール遊びをしたり、駆け回ったり、料理したり。ときおりお兄さんたちにも相手してもらったりして、終始嬉しそうにしていた。
後から聞いたのだが、あるとき息子が、ホームスクーリングしている末っ子さんに、「学校行かなくて、(勉強が)溜まらないの?」と尋ねた。聞かれた彼女の方はキョトンとしていたらしい。きっとお互いの頭の中はハテナでいっぱいだっただろう。息子が新しい価値観に触れた貴重な会話だったに違いない。
当初、別の場所で行われる搾りにも一緒に付いていく予定だったが、ここでの時間がよっぽど楽しかったのか、彼はトキさんの家に残ると決めた。夜はひとりで寝たらしい。家では家族で寝ているので、そんなこともできるのかと嬉しい驚きだった。
自分の家では他の兄弟がいるので、二人きりでじっくり時間を過ごすことはなかなかないが、旅の間、二人で風呂に入ったり、道中普段食べないものを食べてみたり、彼が考えていること、僕が思っていることなど話をした。往復20時間の移動時間は、あっという間だった。
写真:滞在先の敷地内で醤油を搾った。大きな羽釜でお湯を沸かし、醪(もろみ)を溶かしたり、洗い物に使う。また、搾った醤油の不純物を取り除くために火入れをするのもかまどで行う。ここは山間なのに空が広く、この時期少し冷たいが、気持ちの良い風が吹く。
この旅の目的はこちら↓