「かえりみち」 あまんきみこ作, 西巻茅子絵 童心社
この絵本「かえりみち」は、以前紹介した「とんとんとめてくださいな」と共に、お友達や大切な人に赤ちゃんが生まれた時に贈りたいなあと思う本の中の一冊です。
女の子が道で迷子になってしまい、こぎつねが一緒に家を見つけてくれます。ところが今度はこぎつねが迷子に…。そのこぎつねを今度はこぐまが助け、そのあと迷子になったこぐまの家をこうさぎが見つけてくれます。その日の夜、それぞれの人の顔を思い浮かべて眠るというお話。
土佐町には何人も「お話ボランティアさん」がいて、保育園や小学校へ行って子どもたちに絵本を読む取り組みをしています。私もその内の一人として保育園の子どもたちにこの本を何度か読んだことがあります。
次々と迷子になる動物たちや女の子が自分の家を見つけるたびに「ああ、よかった…」とホッとした顔をし、そして「ほんとうによかったねえ」と心底そう思っている表情の子どもたちを見て、目頭が熱くなったことは一度や二度ではありません。
ふとした親切が誰かの心を灯すことがあります。きっと、その灯りは次の誰かに手渡され、また次の誰かに届けられていく。人は大切な何かを交換しながら、贈り合いながら生きている。その小さな循環の存在を、今、確かにこの場所で感じています。
毎日の出来事、ゆく道々で出会う人やものごとのひとつずつを大事にしようと、あらためて気付かせてくれる一冊です。
鳥山百合子