「廉太郎ノオト」 谷津矢車著 中央公論社
上野の東京芸術大学音楽学部校舎の前を通るたび、ここで学ぶ人達を羨ましく思っていました。音楽の才能に恵まれ、努力することを厭わない、選ばれし人たちのための学びの舎。なんて素敵な別世界!
とはいえ、芸大にも文化や音楽が理解されない不遇の時期があり、教授陣や学生たちが一丸となって艱難辛苦を乗り越え「音楽の府」の地位を築いたのでした。その中にいた一人が滝廉太郎です。日本の音楽家の中で燦然と輝く大作曲家の一人の滝ですが、彼だって初めから大作曲家だったわけではありません。 西洋音楽の洗礼を受け、自らの音楽を求める廉太郎と音楽学校の歴史が絡み合い、音楽を通じて芸術黎明期の時代をあぶり出している切ない青春物語。
秋の夜長にいかがでしょうか?