大川村の山の中腹に、本のあるちいさな居場所「ラポール」を拓いた。プレオープンした9月某日にはご祝儀も兼ねてたくさんの方が訪ねてきてくださった。その後は落ち着いたもので、都合をつけてきてくださった方を迎える日もあれば、どなたも訪れないまま閉館時間となることもある。そのどちらもがラポールらしくて佳いなぁと思う。商業施設ではないし、集客を狙って拓いた場でもない。向かいの山や流れていく雲に目をやったり、ため込んだ本を読みつつ誰かを待つ時間は、なかなか素敵だ。これってちょっと「ゴドーを待ちながら」に似てるかも? などとひとり悦に入りながら、川のせせらぎ以外の音が聞こえてこないかと、耳をすませたりしている。

来てくださった方には過ごしたいようにしてもらっている。なんとなく誰かと話したいと思って…ということであれば、茶を用意して気兼ねないおしゃべりの始まりだ。先日は「修飾語を集める人」で話が盛り上がった。初対面の時、どこ出身だ? 何歳か? 結婚しているのかいないのか? 子どもはいるのか、いないのか? 仕事はなんだ? どんな部署だ? 役職は? 果ては年収やら家賃まで。それを聞いてどうするのだろう? というあれこれを矢継ぎ早に聞いてくる人っているけど、あれって不思議だよねぇ、とひとりが口火を切った。たまたまその日、そこに集まったメンバーはそんなことにはあまり関心のない人が多かったのだが、各々が思うところを語り話が広がった。
実はわたしもそういうことにはほとんど興味がない。それよりもラポールにどうして来てくれたのかを知りたいし、最近読んだ面白い本や映画があれば、ぜひ教えてほしい。ラポールで計画していることに興味があるかどうかのリサーチは大切だし、助言があれば伺いたい。もしもラポールでやってみたいことや、一緒にやれそうなことがあれば遠慮なく提案してほしい。そういうことを話すのに、修飾語で語られるあれこれは必要ない。
もちろん、ひとり静かに過ごしてもらって全く構わない。気に入った本があれば遠慮なく読んでもらいたいし、庭のベンチで山や空を眺めるのも良いかもしれない。何をするのもしないのも来た人まかせ。自由気ままにくつろいで過ごしてもらえたらそれでよい。
11月のラポール開館日は5日(水)と19日(水)の10時~16時まで。14時から小一時間、ご要望があれば児童文学や古典についてのミニ講座なども行う予定にしている。よろしければ一度覗きに来てください。





