
玄関先に山積みにされていた大根は、手に取るとひんやりと冷たかった。
二、三本ずつ家の中に運び込む。葉の一部は黄色くしんなりしていて、葉に近い大根の白い部分は皮が一枚、薄くひらりと剥けている。大根についた土はまだ少ししっとりしていたから、この大根たちは先ほどまで畑にあったものだろう。この山盛りの大根で、切り干し大根を作ろうと思いたった。
夜、大根をくれただろう人にお礼を言うために電話をした。やはり、大根を持ってきてくれたのはその人だった。切り干し大根を作ろうと思う、と話すと、「ああ、そりゃあえい。今日みたいにひやーい、北風がうんと吹く日やったらよく乾くき、えいぞー」 と言った。
「もう大根はおわりやき、全部抜いたんよ。へごでわるいけんど」。大根が「へご」だなんてとんでもない。
この地の人は、雪でも雨でも曇りでも山々のあいだで働く。大根の畑でふと顔を思い出してくれたのだろうか。そのことが何よりありがたいなと思う。
切っても干してもなかなか大根の山は崩れない。近所の友人に3本お裾分けした。友人はとてもうれしそうに受け取ってくれて、私もとてもうれしくなった。



