田岡三代

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

田岡三代

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 「やっぱり高血圧はほっとくのが一番」 松本光正 講談社

「クスリ」は下から読むと「リスク」。血圧を下げるために自分のすべき点。

①体重を落とす
②睡眠不足を解消する
③塩の摂り過ぎに注意する
④ストレスをストレスと感じないようにする(何があっても笑い飛ばしましょう)

こんなことを書いてました。
…わかってるんだけど…。

田岡三代

 

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私の一冊

田岡三代

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「日日是好日」 森下典子 新潮文庫

雨の日のお稽古日、お茶室にかかってある掛け軸に、「聴雨」(…雨を聴く)という文字が書かれてあった。

雨の日は、雨を聴く。

雪の日は、雪を見る。

夏には、暑さを。

冬には、身の切れるような寒さを味わう。

・・・どんな日も、その日を思う存分味わう。

お茶とは、そういう「生き方」なのだ。

「日日是好日」(毎日がよい日)

お茶を習い始めて二十五年の著者が、「お茶」を通じて会得した「心」が書かれています。

田岡三代

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私の一冊

田岡三代

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「代償」 井岡瞬 角川文庫

だから小説を読むのは控えていたんだけど…。やっぱり一気に読みたくなるから、徹夜に近い状態になってしまいました。

「全く人を顧みない。全く反省しない、根っからの悪を書いてみたいと思い、書き始めたのが「代償」です」との著者の言葉通り、主人公である圭輔が、根っからの悪の遠縁の親子に全てを崩壊させられていく。

そして、最後には…。

というミステリー小説。そもそもハッピーエンドが大好きな私は、途中、イライラしっ放しでした。

田岡三代

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私の一冊

田岡三代

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「白髪のうた」 市原悦子 春秋社

大好きな女優さんが次々といなくなっていきます。樹木希林さんに続き、この市原悦子さんも…。

「洗濯が好き。」と簡潔な文章から始まっていくこのエッセイ。語り口が市原悦子さんそのもの。

演劇一筋に生き抜いた女性のすさまじいエネルギーが感じられ、今更ながら、あこがれの存在であり続けるにふさわしい人だと納得のいく一冊でした。

田岡三代

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私は小学校に入る直前、能地より森地区へ引っ越してきました。

以来60年、ずっと今も森に住んでいます。

森中学校の東隣です。

森中学校は今は廃校になってしまい、校舎は取り壊されてしまいましたが、

運動場はそのまま残っています。

運動場の周囲に植えられた桜は、大きな木となり毎年見事なピンク色の花を咲かせています。

その運動場の東門から西門へ突っ切っているのが、運動場が出来る前からの地域の道だったそうで、

当時も中学生が使っていない時は、近所の人たちはみんなこの運動場を利用していました。

私の母も当然、買い物に出る時はこの運動場を利用していました。

母は、心臓病を患っていて入退院を繰り返していましたが、

家にいる時、買い物はいつも母の仕事でした。

 

私達姉妹は学校から帰ってきて、母の姿が見えないと、じっと運動場の方を眺め、母を待ちました。

母の姿が西の方に見えるや否や走って行って、

母の手から重たい醤油ビンや買い物かごを取り上げ、母に負担をかけさせまいとしたものでした。

しかし、

母はずいぶん元気になっていたのに、突然37歳という若さで亡くなってしまいました。

心臓発作でした。

・・・が・・・

運動場の端っこにいる買い物かごを下げた母の笑顔は今も心の中にあります。

 

それから十数年がたち、私も結婚。
子供もできました。

長女が小学校へ入学。入学式も終え通常の勉強が始まったある日、運動場の西の方から大きな声が…。
何だろうと外へ出てみると、

「今日は、おしゅくだいが出たんだぞぉ~!」

なんと、意気揚々とランドセルを背負って帰ってくる長女の姿が、運動場の真ん中に。

はつらつと、太陽のように明るい長女の姿。

 

時は違えど、同じ運動場の道をこちらへ向かってくる二つの笑顔。
私が15歳と27歳の時の事でした。

今、その運動場は地域の方たちの駐車場として使われていますが、

・・・想い出はいつもそこにあります。・・・

 

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ほのぼのと

昭和の家族

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秋やったか、冬やったか、いやいや春やったかもしれない…。

祖父・祖母・父・母・私・妹の家族6人で、そろそろ食卓を囲もうかとしていた夕暮れ時、父が妹に「食パン買うて来い」とおつかいを頼んだ。
父は、その頃、トースターに入れてポンッと出てくる食パンを食べるのが毎朝のお気に入りだった。

 

妹は、おつかいに出ていったが、すぐに「フジオ(店の名前)に食パン無かった」と言って、帰ってきた。

父:「次の店には?」
妹:「行かんかった。」

いまでこそ、呉服屋と酒屋と美容院しかない森の商店街だが、当時は、魚屋・肉屋・呉服屋・駄菓子屋・煙草屋・電気屋・本屋・傘屋・靴屋・薬屋などなど生活必需品のすべてが揃う商店街だった。最初の店に食パンが無ければ、次の店に行けばあったかもしれないのに、まだ小学低学年の妹はそれをしなかった。

 

そこで、父の雷が落ちた。
父は、一家の大黒柱然としていたい、いわゆる昭和の父親、絶対的存在だった。
「フジオに無かったら、次の店へ行って買うて来んか!」

一瞬、空気がピーンと張りつめた。3歳年上の私は、これは雲行きが怪しくなったと思い、「私が行って買うてくるき」と言うと、父の怒りによけい火をつけてしまった。
「ほんじゃき!いかんがよ!自分で行って買うてこい!買うてこんかったら今晩のご飯は食べらさんぞ!」

すると今度は、それを聞いていた祖父が、
「寛水(父の名前)!おまえは何という事を言うんじゃ!わしは、おまえにメシを食わさんじゃ言うて怒ったことは一度もないぞ!」
普段温厚な祖父の怒鳴り声を初めて聞いた。

 

父:「子どもをしっかりさせようと思うて怒りゆうんじゃ!わしの言うことに口出しすな!」
祖父:「メシを食べさせんじゃいう脅迫めいた言葉で怒ったらいかん!」

周りの母も祖母もただただ二人をなだめようと必死でオロオロ…。
たかだか食パンを買ってこなかっただけなのに、間違えば家庭崩壊寸前まで進んでしまった。
しかし、そこは温厚な祖父、折れどころを知っていたのか、何とか二人の気持ちも納まり、みんなで夕食についたような…。

 

あとで、妹に「どうして次の店で買うてこんかったが?」と聞くと、
「一回帰ってから、又、買いに行こうと思うちょった」。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
それならその時そう言えば…。こんな大騒ぎになっていなかったのに…。
思えば、周りはオロオロ困っているのに、何故か妹は落ち着いていた。しかも涙は見せなかったような…。小さい頃から妙に芯のしっかりした子やったんやなぁ~。

 

あれから50年余り、登場人物はみんな他界し、妹と私の二人だけになってしまった。
妹63歳。私66歳。
叱った父の気持ちも、かばった祖父の気持ちも分かる年代になってしまった。

 

 

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ほのぼのと

映画

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寒い冬。

映画を観ての帰り、途中で眠ってしまった私の肩を抱きかかえるように、連れて帰ってくれた母のあたたかさ。
忘れられない温もりです。

 

そう!
私達の子供の頃は、近くの公民館で、映画を上映していました。

 

ある時、「風小僧」という題名の映画を観ました。
「風よ~!吹け!」と、風小僧が言うと、さぁ~っと風が吹いてきて、悪者を退治するというもの。
観た後、しばらくは、「かぜよ~!ふけ!」と言って、ちょうど吹いてきた風を、いかにも自分の念力の力だと信じ込み、英雄気取りで遊んだものです。

 

私は「風小僧」。
私の子供達は「ヘーンシーン!」、仮面ライダーやゴレンジャー。
そして孫たちは「ゲーム」。

 

様変わり…です。

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ほのぼのと

お嫁入り

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確か私が中学2年生か3年生の頃でした。

お隣のご長男がお嫁さんをもらいました。

 

当時は、結婚式場などない時代、まさに家から家へのお嫁入りです。

お相手は、800mくらい離れた隣の地区に住んでいる方。

歩いて嫁入り行列です。

 

「嫁を~見よ!」「婿を~見よ!」

の掛け声とともに、花嫁衣装に角隠しのお嫁さんと、

凛々しいお婿さんが歩いてきます。

 

私は、まっすぐ見るのが恥ずかしくて、道路側の窓のすき間からそっと覗きました。

学生時代には、その制服姿が、写真屋さんの店頭にしばらく飾られていたというほどのお嫁さん。

その美しさはまばゆいばかりです。

 

あれから50年。

私は孫4人、そのお嫁さんにも孫3人。

もうそろそろお嫁入りをしてもおかしくない年頃の孫達がいます。

 

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ほのぼのと

部活

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「ばあば!ばあばらぁの時の部活はどんなやった?ばあばは、バレー部やったんやろ?」と、中学一年生の孫。

私:「ばあばらぁの時はねえ、バレーボール大会があるちょっと前に、先生がバレー出来そうな子を集めて、1か月ばぁ練習して試合へ行ったんで。」

孫:「ふ~ん」

私:「陸上の大会がある時も、大会の前に、先生が選手を決めて、少し練習して大会へ行ったんで。冬はスポーツの大会がないき書道をしたんで。」

孫:「アハハハ!変なの!」

 

そういえば、中2の夏、高知市でバレーボールの大会があった。
私はセッター。一級先輩には、後に実業団へ行ったほどの運動神経抜群のエースアタッカー。

当時は、体育館などないので、外の運動場が試合会場。
ところが、高知市の空は広い。運動場も広い。
私は、あまりの眩しさに頭が真っ白になってしまった。

うまくエースアタッカーにトスが上げられない。

当然、試合は一回戦敗退。

 

半世紀過ぎても、苦い想い出。

このことは、孫には内緒にした。

・・・が・・・

後日、別の孫が少し落ち込んでいる時、この話をすると、孫の右頬がニヤッとした。

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ほのぼのと

今ちゃん

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「メェ~~」
「メェ~~」
小学生の頃、山羊の鳴き真似をするのが流行った。
と言っても、私と近所の今ちゃんの二人だけ。

家から500メートルぐらい登った所に住んでいる今ちゃん。

今ちゃんちでは山羊を飼っていた。

ある日、いつものように山羊が鳴いているので、下から私が鳴き真似をして「メェ~~」と言うと、向こうも答えてくる。
おもしろくて何度も何度も繰り返し、だんだん声のする方へ近づいていくと、山羊だとばっかり思っていた「メェ~~」は、何と、今ちゃんだった。
今ちゃんは、最初からわかっていたんだ。

3歳年上の今ちゃん。
小学1年生の時から、毎朝、学校へ連れて行ってもらった。
かしこくて、足も速く、何をやってもあこがれの存在。

その今ちゃんに、ついに卒業の時が来た。

無事、卒業式も終わった次の日、「今ちゃん!行こう~!」
何と、私は、いつものように迎えに行ってしまった。
当然、今ちゃんは、「・・・???」

あれから、56年。
いろんなことがいっぱいあり、今も同じ場所に暮らしている。

そして私は、「今ちゃん!行こう~!」と、相変わらず言っている。

 

 

今ちゃんと三代さん

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