「フラミンゴボーイ」 マイケル・モーパーゴ 著, 杉田七重 訳 小学館
児童文学やYA小説を「小学生の読む本」とか「中高校生向けの本」と受け止めているかたは多いように思います。でもそれはちょっと残念な誤解です。小学生から、あるいは中学生くらいから「読みこなせる本ですよ」ということで、決して子どもだけを対象とした作品ではありません。
マイケル・モーパーゴは優れた児童文学・YA小説の書き手の一人です。第二次世界大戦下を生きのびる人々をテーマにした作品の多いモーパーゴですが、厳しい状況であっても決して失わない人類への信頼と希望を描ききる筆力に、毎回圧倒されます。 本書では第二次世界大戦のフランスを舞台に、ロマの少女と他者との意思の疎通が困難な少年、そして少年がこよなく愛するフラミンゴを主軸に据え、戦時下において最も迫害を受ける弱者の視線から、戦争の理不尽さが語られています。
古川佳代子