「ふたつめのほんと」 パトリシア・マクラクラン作、夏目道子訳 福武書店
事実と真実って似ているけれどイコールではないよなあ、と思うことが時々あります。例えば事実のデータを例示して書かれた記事が真実とはいえないこともあるし、創造の話である神話や民話の中に普遍的な真実が語られていることがあったり…。この似て非なる事実と真実の狭間で戸惑いながら成長する少女の姿が素敵に描かれた物語がこの『ふたつめのほんと』です。
主人公のミナーの母親は小説家。机の前のボードには、様々な言葉を書いた紙を貼りつけています。その中の「事実と小説は 、それぞれに真実」という言葉がミナーは気になって仕方ありません。作りごとの話である小説ってうそのことでしょう?それなのにどうして真実なの?11歳のミナーには納得できません。
でも、目下の問題は習っているチェロにビブラートがかけられないこと。一緒に習っているルーカスはビオラに素敵なビブラートがかけられるのに、どうして私はかけられないの?? 音楽の神様、ウォルフガング様、どうか私の力をお貸しください!
目に見える真実だけでない、もう一つの真実“ふたつめのほんと”に気付き始めた少女の揺れが、モーツァルトを伴奏に軽快に描かれています。