誰しもこれまでの来し方を振り返った時、あれが今に至るターニングポイントだったのだな、と思う出来事があるのではないだろうか。司書として今ここにいる私のターニングポイントは、お城の下にあった高知県立図書館子ども読書センターの「子どもの本の読書会」に参加したことだった。
文字が読めるようになった時からずっと、傍らには本があった。本が読めれば幸せで、図書館は大のお気に入りの場所だった。成人後は一般小説やミステリーを好んで読んでいたが、時々はこども室ものぞいていた。ある時、こども室の司書の方から読書会に誘っていただき、読書会とは何なのかよくわからないまま、ちょっとした好奇心から出てみることにした。
少し緊張しながら参加したのだが、会では同じ本を読んだ者同士が年齢や職業などの垣根なく、誰もが真剣かつ朗らかに感想を述べ、対等に意見を戦わせていた。その居心地の良さ、忌憚なく語り合える喜び、高揚感は、一人で本を読むのとは全く違う楽しさだった。この日を境に、本との新たな付き合いが始まったのだとしみじみ思う。
先日、東吉野村の人文系私設図書館ルチャ リブロで開かれた「本について語り合う夕べ」に出かけて行った。一泊二日のちょっと変則の読書会では、本を真ん中に語り合い、一緒にご飯を食べ、自然に身をおき、焚火を囲んでまた語り合った。言葉にしがたいものがあることは承知しつつも、みんなでどうやらこうやら言葉をさぐっていく時間は、何物にも代えがたい楽しい時間だった。
これまでに参加した読書会は数えきれない回数になったが毎回、未知の世界への扉を開いてくれる。読書会に興味を持たれた方がいらっしゃったらぜひ一度、お近くの図書館で開かれている読書会をのぞいてみることをお勧めする。