「あれよ星屑」 山田参助 KADOKAWA
なんでこんなすごい漫画が描けるんだろう?
久々にそう思わせてくれた漫画です。こんなに悲しくて切なくて、エグくて輝いている漫画を描ける人間に、叶うことならなってみたいと思います。
物語は戦後の混乱期から始まり、中国戦線から復員してきた黒田門松と、「班長殿」と呼ばれる川島徳太郎を中心に進んでいきます。
男も女も子供も老人も、悲しみと敗北感を抱えながら今日を生きることに必死で、だからこそ命が輝くような、そんな物語。
冒頭に班長殿は「黒田 俺はな あのとき死んだほうが良かったと思っとる」と言って酒浸りの生活を送っているのですが、物語が進むにつれその鬱屈の正体が判明していきます。
戦後と戦中(二人の中国戦線時代)が交錯し、時には異常な極限状態の中で、人間性を失うことを強要される(もしくは人間性を失った方が楽になれる)ような現実を眼の前にして、さあお前ならどうするかとヒリヒリする問いを投げかけられているような気がします。
その闇の部分が漆黒の深い闇として描かれている分、戦後の少々コミカルでエロも入った部分が光として輝く。
大人の漫画として、なぜ今まで読んでなかったんだろうと悔しくなりました。
とさちょうものがたり編集部に全7巻置いてありますので、ご興味のある方は読んでみてください。