とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただいています。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。
鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載されます。
やなせさん
香美市出身の漫画家、やなせたかしさんは「人間が一番うれしいことは何だろう?」と長い間考え続けていたそうだ。そして見つけた答えは「人は人を喜ばせることが一番うれしい」。自分の作品を見た人が喜んで笑ってくれるとうれしくてたまらない。笑い声を聞きたくて、喜んでくれるのがうれしくて、描き続けることができたという。
生活しているとさまざまな「うれしい」と出合う。例えば、自分の取り組んだ仕事を喜んでくれた人がいたり、子どもが「このおかず、おいしい!」と言ってくれたり。
相手が笑ってくれた、楽しんでくれた、喜んでくれた。その実感に励まされ、大きなエネルギーをもらいながら、私は今まで何とかやってくることができたのだと思う。
「人間が一番うれしいことは?」。
その問いの答えはどこか遠くにあるのではなく、きっといつも自分のそばにある。
目の前のあの人、この人、誰かを喜ばせることが巡り巡って自分の喜びになっていく。その循環はきっと世界共通。人間は、そういったことにうれしさや喜びを感じる生き物なのだと思う。
「人生は喜ばせごっこ」。
やなせさんの言葉はまさしく真理だと、今実感している。
(風)
2024年5月1日の高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。
最近、高知県香美市出身の漫画家、やなせたかしさんの著書を読んでいます。
やなせたかしさんといえば、子どもたちに大人気、丸顔の正義の味方「アンパンマン」の作者というイメージが浮かぶ方も多いと思います。
アンパンマンは、やなせさんがが従軍し、空腹ほど辛いものはないという経験から生まれたキャラクターであることを知りました。いや、キャラクターというよりも、やなせさんの哲学そのものと言ったらいいでしょうか。
アンパンマンは、やなせさんが50歳の時に誕生。やなせさんはそれまで、代表作と言えるものがないという思いに苛まれていたといいます。そう知ってから、あちこちでにっこり笑っているアンパンマンの見え方が変わりました。
そのやなせさんが遺した言葉の一つが「人生は喜ばせごっこ」。やなせさんがご存命だったら「まさにその通りです!」とお伝えしたかったです。