土佐町の絵本「ろいろい」。コロナ禍の数年も挟んで、約5年かけた長期プロジェクトとなりました。
完成した「ろいろい」は、ジャバラ型の少し変わった形をした絵本。ながーいページを伸ばすと、そこには土佐町の実在の風景や文化、人々が描かれています。
表面には春と夏の町。裏面には秋と冬。
15回に渡る記事で、絵本「ろいろい」を1ページずつ解説していきます。
ろいろい ろいろい
「おーい!いっしょにおよごうや!」
めをつぶり ざぶんととびこむ
みみもとではじける みずのつぶ
あゆのからだが きらきらひかる
6ページ目は、いざ川へ!
土佐町の夏といえば、川!
蒼く澄みきった川。鮎やアメゴの泳ぐ川。川に飛び込む子どもたち。岩や橋の上からざぶんと飛び込むと、耳元で水の粒が弾ける音が。気持ちいい!気分爽快!大体7月くらいから、川で遊ぶ人たちの姿が見られます。
「キネマ土佐町 夏」には、さまざまな夏の川の顔が映されています。
「土佐町ポストカードプロジェクト」にも、たびたび川は登場しています。下に4つ紹介していますが、他にもまだまだあるので、ぜひ探してみてください。
町内にはいくつも遊べる川があって、それぞれの人にお気に入りの場所があります。
↓平石川
↓地蔵寺川
↓東境に流れる川
↓石原地区を流れる押ノ川
岩から飛び込む!
このページに描かれているのは、地蔵寺立石という場所。描かれている大きな岩も実在しています。地蔵寺地区の子どもたちは、岩のてっぺんから飛び込んでいたそうです。近くまで行くとかなりの高さ!度胸が試されます。
↓2020年2月、下田さんも地蔵寺立石を訪れました
子どもは川で遊ぶ
石原地区出身、作家の司馬遼太郎さんの編集者だった窪内隆起さん。とさちょうものがたりの連載「山狭のおぼろ」では、石原地区で過ごした子ども時代の思い出を綴っています。窪内さんのお家へ伺った時、小学校4年生の時に自分で作ったという「金突鉄砲」と「水中眼鏡」を見せてくれました。「金突鉄砲」は、魚を突く道具です。
川や山が子どもの遊び場だった時代、魚を突いた時の感覚が今も残っているといいます。その様子を語る窪内さんはそれはそれは楽しそうで、思い出はいつまでもその人を支え続けるものなのだと感じます。
幼い頃に培われた感性は一生もの。自然の中で遊ぶ、とにかく遊ぶ。現代の子どもたちにもその時間と経験を作ってあげたい、と強く思います。
↓窪内隆起さんが書いた「金突鉄砲」のお話はこちら
しゃくり漁
絵の真ん中、水に飛び込んだカッパの右横には、水中で長い棒のようなものを持った大人がいます。これは、鮎の「しゃくり漁」をしている様子が描かれています。「しゃくり漁」は、竹ざおの先に糸と針をつけた道具で、泳ぐ鮎を引っかけてとる伝統漁法です。
水中をのぞき、鮎の通り道を狙います。鮎が針の上を通った時、竿をあげ、鮎を引っ掛けて捕らえます。透明度が高い川だからこそできることです。
鮎漁が解禁されると、川のあちこちで、こういった姿の大人たちを見かけます。
金突きとハコビン
男の子が持っているのは「金突き」。竹の先につけた鉄の銛先で魚を捕らえます。首から下げているのは「ハコビン」という木枠にガラスがはめ込まれた「ハコビン」と呼ばれる道具です。びっくりするほど水の中がよく見えます。
きらきらひかる
文章の最後「あゆのからだが きらきらひかる」。この一文は土佐町上津川地区で暮らしている川村栄己さんのお話から生まれました。
栄己さんは、早明浦ダムができる前の川をよく知る人です。「道路から川をのぞき込むと、鮎のからだの黄色い模様がキラキラ輝いて見えた」「それほど川がきれいだった」と懐かしそうに話してくれました。
栄己さんの言葉が、この地の川の美しさを伝えてくれています。
川は、私たちの生活の中にあります。
風景の中に、暮らしの中に、いつもそばで流れている。きれいな川が暮らしの中にあることは、かなり、いや、相当幸せなことだと感じます。
ろいろい ろいろい。川で遊んだあとは、どこへ行こうか?
次のページをお楽しみに!