(前編はこちらから)
しかし4年目のある日、「いかんと思うてほたくっちょった」育苗箱をふと見た時、岡林さんは目を疑いました。
「芽がでゆう!」
それは貝割れ大根のような、細く小さな芽でした。
「そりゃあ、うれしかったよ!そりゃあ、うれしいで!」
岡林さんは芽が出た条件を独自に研究し、大きくなったものをポットに植え替えて畑へ移植。毎年少しずつ株を増やしながら植え続け、畑の面積を広げていったそうです。
「何十万、何百万という種があるきね、100万位は畑に落ちちゃあせんろうか…。でも、ほとんどは生えん。なんぼ落ちたち条件が揃わんとね。芽が出たらしよいでよ(育てやすい)。条件がよかったらずっと生える」
「とにかく種から苗を立てるのが難しかった。芽がでるまでが苦労した。全部1人でやらないかんかったし。今の状態になるまで20年ばあ、かかった」
「もしあの時、芽が出ていなかったら、今、全然しやせんで」
猿にしおでの先をかじられ、アナグマに根元を掘り返され、うさぎもイノシシもいる。日々、動物たちとの戦いです。
それでも岡林さんはこの場所でしおでを作り続けています。
瀬戸地区で生まれた岡林さん。
「県外に出たいと思ったこともある。でも、どこ行ったち働かないかんしね。ああでもない、こうでもないと、ある程度はあずってせないかん」
岡林さんのしおでの畑の目の前には雄大な景色が広がっていました。はるか下の谷間に見える一本の白い筋から、どうどうと地の底から駆け上がって来るような水音が響いてきます。
「あれは瀬戸川。正面の山、あれは東門(ひがしかど)山。左は岩茸山で、左向こうが黒丸の集落。右奥は大師山で、右後ろは安吉」
自分の立っている小さな一点は、連なる山々とちゃんと繋がっているのです。
岡林さんは教えてくれました。
「しおでを取り終わって1ヶ月くらいした後、土が見えんなるばあ葉が茂って、しおでの棚が真っ青になる。それは綺麗で!青白い花が何万と咲いて、ミツバチがどんどん来る。不思議なんじゃけんど、昼は来ん。夜に蜜が出るんじゃろうかね、しおでだけは夕方、仕事から帰る時分にブンブンブンブン来る。」
「その時、また見に来たらえいよ」
それは、しおでを育てている人にしかわからない自然の営みです。
「しおでを、いろんな人に、ようけ使うてもろうてよ、送ってくれと言われたらうれしい」
岡林さんはそう話してくれました。
お土産に、両手がいっぱいになるほどしおでをいただきました。
岡林さんオススメのかき揚げを作ってみました。
しおでのかき揚げ
【材料】しおで・小麦粉・塩・水
①しおでを食べやすい大きさに切る
②小麦粉に水、塩を加え、とろりとした衣を作る。(卵を加えたり、小麦粉の代わりに米粉を使っても美味しいです)
③しおでと衣をからめてからりと揚げる。
④塩をパラリとふって、熱いうちにいただく。
少しモチっとしてた食べ応えがある食感。ついついもう一つ、と手を伸ばしたくなる味です。
土佐町だけで育てられているしおでの収穫は、7月上旬まで。
「幻の山菜」と呼ばれるしおでを、ぜひ多くの方に味わっていただけたらと思います。
*岡林さんと出会うきっかけをつくってくれた土佐町の島崎直文さん、ありがとうございました!
三宅 純
こんにちは、山菜は色々知ってますが此のシオデと言う物は、初めて知りました。是非食べて見たいですね又 愛知県なんですが此方にも自生するものなのかが興味深く思いましたね。
とさちょうものがたり
三宅様
コメントありがとうございます。
調べてみたところ、シオデは日本各地で見られるようですので、ぜひ探してみてください。
土佐町では田の畦などに自生しています。
アスパラのような食感でとても美味しいです。