笹の母屋の前には、田畑合わせて一反くらいある。そこでお米や野菜を育て収穫、季節の恵みをいただいている。
種はなるべく自家採種している。
うまく採れなかったときは知り合いから分けてもらったり、どうしてもというときは購入することもある。
千葉から持ってきた落花生やキュウリなどは五年以上、
高知で出会ったモチキビや里芋などは三シーズンくらい種を採っている。
昔は、育った野菜などを選抜し、種を採り、次の年にまた栽培することが当たり前だった。
同じ場所で何年も種を採っていくと、その地域の気候に適した野菜や米が育つようになる。
また病気などにも強くなると言われる。
しかし種を採るためには長い時間が掛かったり、交雑しないような工夫が必要で、一手間も二手間も掛かる。
稼働率を考えれば、種を購入したほうが効率的だ。
それでも近所にはいまだに自家採種を続ける方々が多い。
種を購入しなくて良いという経済的な理由よりも、
昔から継いできた種を絶やしたくない次に繋げたいという気持ちが大きいのかなと想像する。
いや、もっと本能的な行動なのかもしれない。
土佐町にやって来て最初の年、地元在来の大豆をつくりたくて、近所のおばあちゃんに種を分けてもらった。
「品種はなんですか?」と聞くと、「名前は知らん。大豆は大豆よ」と言う。
その答えに心の底が温かくなったのと、なんだか仲間に入れてもらったような気がして嬉しかったのを覚えてる。