「たべもの九十九」 高山なおみ 平凡社
高山なおみさんの本を何冊か持っている。
料理本にある「白菜の鍋蒸し煮(白菜とベーコンを順番に重ねて蒸し焼きにする)」や「トマト焼きごはん(豚肉とトマトを別に焼いて、同じお皿にごはんも盛って目玉焼きをのせて食べる)」や「春菊のチヂミ」は、今まで何回作ったのかわからないほどで、もう本を見なくても作ることができる。
ベーコンじゃなくて豚肉の時もあるし、春菊ともやしでチヂミを作っても美味しい。高山さんのレシピは、これはあくまでもひとつの作り方で、あなたが好きに自由に楽しく作ってね〜という感じが伝わってくるようで、だから好きなんだと思う。
「たべもの九十九」は、ひらがな50音順に並んだ食べ物のエピソードが書かれている。
中でも「そ:そうめん」のお話が好きだった。
子どもの頃、夏の日のお昼ごはんは大抵そうめんだった(気がする)。大きなガラスの器に真っ白な涼しげなそうめんと、缶詰のみかんが一緒に入っていたことを思い出す。みかんを弟たちと取り合ったっけ。
少し前の夏の日に、オクラを茹でて切ったもの(切ったら星みたいになって楽しい)や、きゅうりを細く切って塩もみしたもの、しょうがのすりおろし、のり、しその葉、モロヘイヤとおかかを混ぜてしょうゆをちょっぴり入れたのやらを色々と、そうめんの薬味にして食べた。
その日の風景は今もよく覚えていて、多分、これからも思い出すのだと思う。
ひとつひとつの食べものが、記憶の引き出しにしまわれていたお話を連れてくる。
高山さんは書いていた。
「(中略)20代のはじめ。あの頃の私に、手をふって教えてあげたい。「おーい、未来にはたいへんなこともいろいろあるけども、楽しいことがたくさん待っているし、三度三度食べるごはんのおいしさも、ちゃんとわかるようになるよ。だから、だいじょうぶだよ」
その気持ち、わかるような気がする。
鳥山百合子